研究課題/領域番号 |
24510171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
久保 いづみ 創価大学, 工学部, 教授 (40214986)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 単一細胞 / 発現遺伝子 / 検出 / Hot Cell-direct RT-PCR / ラボディスク |
研究概要 |
本研究では、これまでに当研究室で開発したハイスループットに細胞懸濁液からの単一細胞分離を行うことができるラボディスク上で簡便に単一細胞の発現遺伝子を検出するため、我々が考案したHot Cell-direct RT-PCR法を利用して、個々の細胞の遺伝子発現量の差異を検出することを目的とした。まず、これに用いるマイクロ流路および約300個/流路のチャンバーを設けたディスクをシリコンウェハで作製した。1個のチャンバーの容積を約1 nlと微量になるようにした。発現遺伝子の検出には蛍光プローブとして、ダブルダイプローブを用い、発現量の差異を検出するため、β-actinを基準とすることにした。個々の細胞のβ-actin発現量と他の遺伝子の発現量を同時に検出できるようにするため、用いるプローブは異なる蛍光色素で標識し、複数の遺伝子を同時検出できるようにした。このディスクを用いてJurkat cell(ヒト急性白血病T細胞)の細胞懸濁液を単一細胞に分離し、そのままRT-PCRを行うことによって遺伝子の発現検出を試みた。測定は、細胞をRT-PCR用の試薬に懸濁したものを流路に流して、細胞をチャンバーに分離したのち、各チャンバーの蛍光画像を取得し、Hot Cell-direct RT-PCR前の蛍光強度を計測するとともに、各チャンバーに入っている細胞数を確認した。この後、Hot Cell-direct RT-PCRを行い、40サイクルのPCR終了後に蛍光測定を行い、反応前後の個々のチャンバーの蛍光強度比を算出した。細胞が入っていないチャンバーではいずれも蛍光強度比は1程度で、誤差は5%以下であった。さらにβ-actinを基準として比較したところ、GAPDHでは細胞ごとのばらつきは小さく、CD95,IL-6などでは差が大きいことがわかり、この方法で発現量の差異を検出できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に必要なプローブ、プライマーの設計、リアルタイムPCRを用いての、これらの有効性の確認を行った。完璧ではないものの、有効なプローブ、プライマーが得られたことから、ラボディスクでの検証に進んだ。 当初予定していた、PMAでの遺伝子の発現誘導については、確認ができなかったものの、通常の条件で培養した細胞を単一分離し、個々の細胞での遺伝子発現量の差を検出できたので、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には単一分離した細胞での2,3の遺伝子については、発現量の違いを検出できることが示唆された。しかし、細胞に対して刺激により発現量が変化する遺伝子の検出を行うことはできなかった。これは、刺激を与える時期や、与え方に問題があった可能性が考えられる。そこで、平成25年度は、適切な刺激の与え方をリアルタイムPCRで確認したのち、ラボディスクでの発現量変化の検出実験へと展開する。 また、平成24年度はラボディスク上でのPCRは、蛍光顕微鏡(PCR顕微鏡)とは別のサーマルサイクラーで行い、PCR前後の蛍光測定のみ、PCR顕微鏡で行った。これによって、遺伝子発現量の違いを検出できたため、さらに今後は、PCR顕微鏡でPCRも行う検討も進め、ディスク上でのリアルタイムPCRの方法についての検討を進める。 また、これまで扱っていたJurkat Cell以外の細胞についても、発現量の変化が見られる可能性の高い遺伝子について検出に必要な蛍光プローブ、プライマー等の設計や有効性の確認をリアルタイムPCRにより行ったあと、ラボディスクでの検出を行えるかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に使用するラボディスクの製作費45万円 プローブ、プライマー等の試薬類 30万円 学会発表旅費 25万円 を予定している。 平成24年度の残額1185円もこれらに組み込んで使用する。
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