研究課題/領域番号 |
24510172
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
木股 雅章 立命館大学, 理工学部, 教授 (60388121)
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キーワード | 赤外線センサ / MEMS / 多波長 |
研究概要 |
本研究の目的は、1つの赤外線アレイセンサ上に、複数の分光感度特性を持った画素を配列した多波長非冷却赤外線アレイセンサを実現する基本技術を開発することであり、このためには、製造工程内で同時に複数の波長選択性実現できる赤外線吸収構造を開発することが最重要課題である。当初の研究計画では、平成25年度の目標は、平成24年度分光吸収特性を確認した赤外線吸収構造をサーモパイル赤外線検出器に適用して赤外線センサとして選択的な分光感度特性を確認することであったが、平成24年度、プラズモニクス波長選択構造によりサーモパイル赤外線検出器に選択的な分光感度特性を持たせることができるという結果が得られていたので、平成25年度は、プラズモニクス波長選択吸収構造の特性を理解するために、形状と配列方法が与える影響について調査するとともに、プラズモニクス波長選択吸収構造で実現可能な波長選択特性で、実際の火炎検知などが可能かどうかをモデル計算で検討した。 平成25年度の研究の中で、プラズモニクス波長選択構造の孔形状を平成24年度作製した円形に対しそれぞれの軸方向で非対象の形状を導入することで偏光選択性を持った吸収体を実現できることが分かった。特に、楕円形状の場合、長軸方向の長さのピッチに対する比率をできるだけ大きく(60%以上)、短軸方向の長さのピッチに対する比率をできるだけ小さくすることで偏光選択性が向上する。この現象は、プラズモニクス構造で発生する表面波が、孔内で空洞共振を起こす場合に吸収が増大することで説明できることが分かった。また、円形孔のプラズモニクス波長選択構造で縦と横異なった配列ピッチとすることで、それぞれのピッチに対応した2波長を選択することができること、三角格子上に円形孔を配列した場合は、正方格子上に配列した場合より吸収ピーク波長が短くなることをシミュレーションおよび実験で確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初2年目で計画していた目標は、初年度に達成できたので、今年度は最終年度の多波長赤外線アレイセンサを設計するのに有効な情報を得るための検討と実験を行い、予定通り最終年度にアレイセンサを試作できるレベルまでの技術的知見が得られたので、「おおむね順調に進展している。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに獲得した技術を基に、最終年度にはサーモパイル方式の多波長赤外線アレイセンサを開発する。シリコンプロセスについてはこれまで通りコーデンシ株式会社に委託し、MEMSプロセスは立命館大学のマイクロシステムセンターのクリーンルームで実施する予定である。最終年度には、画素での不要光吸収を減らし波長選択のS/Nを向上させる技術の開発にも取り組む。研究用消耗品の購入については昨年度と同様であり、旅費の内、海外出張に関しては、4月にボルチモアで開催される赤外線関連の最大の国際会議であるSPIE DSSへの参加を計画しており、この学会でプラズモニクス吸収構造に関する研究発表をする予定である。国内出張に関しては、松江市で開催される電気学会センサ・マイクロマシンと応用システムシンポジウムでの研究発表を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
素子評価のためのアセンブリ作業を学内で行なうことができないものがあり、これを外注して作製するために残しておいた費用であるが、外注先で年度末に注文が集中し、処理できなかったため次年度納入となったことが予算残が発生した原因である。 上記外注試作については、4月初めに既に納入されており、それ以外の計画については変更はないため、最終的には当初の計画通り助成金を使用する予定である。
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