研究課題/領域番号 |
24510177
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岸本 茂 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10186215)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本年度は平行平板型構造の大気圧プラズマCVD装置を開発して、イオンダメージの少ないカーボンナノチューブの成長を目的とし、既設の真空チャンバに大気圧プラズマの発生部となる電極と基板加熱機構の設計と製作を行った。キャリアガスとしてHeを使い、プロセスガスにCH4,H2を持ちいて大気圧プラズマ放電を確認した。大気圧プラズマはプロセスガスの比率及び大きな高周波電力の印加で不安定となることからHeに対するCH4及びH2のガス流量依存性と高周波電力との関係性を調べた。基板加熱は大気圧中で700℃まで昇温することが確認したので、従来の鉄触媒を使ってナノチューブ成長を試みた。少量ではあるがナノチューブの成長を確認できたが、再現性は得られていない。大気圧プラズマは放電範囲が狭いことから、減圧下でのナノチューブ成長条件とは異なる条件設定が必要となった。 ナノチューブトランジスタでは大気中ではp型を示すことが多く、ソース、ドレインの電極材料で伝達特性や伝導系が変わることが知られているので、電極材料についての検討を行った。ここではグラフェンをナノチューブのコンタクト材料に使い、ソース、ドレインに用いて通常の金コンタクトと比較検討した。金コンタクトよりオン電流が増加し良好な特性が得られ、グラフェンでコンタクト抵抗が低減すること、真空中では両極性となることからコンタクト電極と伝導系の関係性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は大気圧プラズマ装置の製作とナノチューブの成長条件を検討することとし、装置を製作して大気圧プラズマ放電を確認した。しかし、大気圧プラズマの放電条件はプロセスガスに大きく依存し、十分なナノチューブを確認できておらず成長条件を詰め切れていない。しかし少量ではあるが単層ナノチューブを走査型電子顕微鏡で観察しており、今後は基板温度、触媒膜厚と触媒材料など、今までの減圧下でのナノチューブ成長とは異なる条件も含めて検討する必要がある。また、キャリアガスであるHeの入手が困難であったことから当初予定から若干遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
1.大気圧プラズマCVDによるナノチューブ成長の検討 24年度で再現性が得られていなので、引続き成長条件の検討を行う。新たに鉄触媒以外の材料と膜厚などパラメータを増やして成長条件を精査する。また、現状の放電電極のカソード、アノード間にグリッド挿入が困難であることから、成長条件が確認できたところで、グリッドが挿入できるよう電極部の改造を検討する。 2.n型伝導ナノチューブの成長と電気特性評価 成長時に窒素を導入してドーピングを行い顕微ラマン分光測定と電気特性から評価する。24年度のグラフェンコンタクト電極の結果から、ナノチューブに窒素がドープされれば、n型伝導が強くなることが期待できる。また仕事関数の低い金属の検討と表面保護膜の検討を行うことで、安定したデバイスの作製を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
グリッドが挿入できる放電電極の改造を行う。また、大気圧下で700℃の加熱を行うため、基板ヒータの消耗が予想され予備品を購入する。その他、材料ガスを含め多くは消耗品で使用する。 経費の一部は共用施設の装置使用料に当てる。
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