研究課題/領域番号 |
24510180
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
斉藤 光徳 龍谷大学, 理工学部, 教授 (60205680)
|
キーワード | 色素 / ポリマー / 光学材料 / 耐久性 / 分子拡散 / 自己修復 / 自己形成 |
研究概要 |
有機蛍光色素はレーザ媒質として広く利用されているが、強い光照射や熱の影響で劣化しやすい欠点を持っている。固体に分散させた色素分子が液体中と同様に流動性を持つなら、劣化した色素分子が新鮮な分子に置換されるので、発光媒質の耐久性を向上させることができる。このような自己修復機能を持つ固体マトリクスとしてポリジメチルシロキサン(PDMS)に着目し、昨年までの研究では、ジシアノメチレン(DCM)のような非極性色素を分散させることに成功した。今年度は、レーザ媒質として最も広く利用されているロダミンについて実験を行った。ロダミンは極性を持つためアルコールなどの極性溶媒に溶かしてPDMSと混合する必要がある。しかし、メタノールやエタノールは非極性のPDMS中では液滴を形成してしまい、色素を均一に分散させることができない。また、原液となるPDMSオイルを硬化させる際に使用する架橋促進剤がロダミンと化学反応を起こすことも分かった。そこで、2-プロパノールとトルエンの混合溶液を作製し、硬化後のPDMS中に浸透させる方法を試みた。その結果、PDMS表面に滴下した色素溶液が1か月ほどで浸透し、均一な色素分散固体が形成されることが明らかになった。 本研究で取り組む「自己修復」のもう一つの意味は、光信号が自発的に光路を形成することや、形成された光路が伝搬媒質によって自然に閉鎖されることである。この機能を実現するため、ジアリールエテンをPDMS中に分散したフォトクロミック(可変色)ポリマーを作製した。このポリマーに紫色光を照射して一様に着色させた後、緑色光を照射するとその光路だけが透明になり、後から来る光が通るようになった。しかし、そのまま放置しておくと、着色した色素が周囲から流入するため光路が閉じられることも分かった。この機能を用いて、発生頻度の高いパルス信号だけを選択的に通過させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、劣化した色素を新鮮な色素に置き換える自己修復機能の実現に成功したのに加え、今年度は、信号光によって自己形成された光導波路を伝搬媒質が自己修復的に閉鎖する機能を実現することができた。これらの実験結果により、本研究の目的を達成できる目途が立った。
|
今後の研究の推進方策 |
当初に立てた計画がほぼ予定通りに進んでいるので、最終年度となる次年度には、サンプルの改良や、不十分な点の再実験などを行い、信頼性の高いデータを出して研究のまとめを行う。
|