酸化物高温超伝導体は、層状ペロヴスカイト結晶構造を有する。その中でもBi2Sr2CaCu2O8+dは、2枚のCuO2面からなる超伝導層間に、SrO-BiO-BiO-SrOの4原子層からなる絶縁層が挟まり、上下の面に配線すればジョセフソン素子として動作する。結晶構造そのものに素子構造が形成されている稀有の物質である。ジョセフソン素子を金属の超伝導体と酸化物絶縁体とで作製するときには、いかにして制御された接合界面を作るかが問題となる。一方、単結晶そのものがジョセフソン素子であるBi2Sr2CaCu2O8+dの界面は、結晶の並進対称性でその完全性が担保されていて、界面が原子層レベルで平滑な理想的なジョセフソン接合を形成している。しかも多数のジョセフソン接合が結晶のc軸方向にアレイを形成している。さらに、高温超伝導体の高い超伝導遷移温度を反映して、超伝導エネルギー・ギャップが1桁大きいことから、交流ジョセフソン振動数の上限が、金属系の~1 THzに対して、10 THzへと拡がっている。厚さ1.5 μmの結晶には、1000個の接合が直列し、これらが位相整合して発振すれば、100万倍の出力が期待されるためIJJsは、テラヘルツ周波数領域の新たな光源として期待されている。溶融帯移動法により、固有ジョセフソン接合作りに必須の高純度・完全性の高い単結晶を育成するとともに、固有ジョセフソン接合を微細加工して、1THz超発振・25μWビーム出力を実現した。
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