本年度は,前年度までの研究成果を取りまとめ,電気自動車での移動に必要な充電施設の密度を決定するためのモデルを提案した.具体的な研究成果は以下の通りである. 1.充電施設へ立ち寄るための寄り道距離を考慮できるように立地分析モデルを拡張した.これにより,寄り道距離の増加による施設利用需要の減少を記述できるようになった.一定の寄り道距離以内で施設に立ち寄ることができ,かつ施設で充電することで往復移動が可能となる起終点ペアの量を用いてサービスレベルを評価した.そして,一定のサービスレベルを達成するために必要となる施設密度を求め,移動者が許容できる寄り道距離が大きくなるほど,必要となる施設密度が低くなることを示した. 2.トリップ長分布を考慮できるように立地分析モデルを拡張した.これにより,起終点間距離の増加によるトリップ発生頻度の減少を記述できるようになった.対象領域内でのトリップ長分布が与えられたとき,すべての起終点ペアのうちで,施設で充電することで往復移動が可能となる起終点ペアの割合を用いてサービスレベルを評価した.数値例として,起終点が一様に発生する円形領域において,設定したサービスレベルを達成するために必要となる施設の数を求めた. 以上の研究成果は,電気自動車の普及に必要な充電施設の数を決定する際の基礎資料となる.それに加えて,家庭や職場における充電設備の設置に対する補助など,電気自動車の普及のための政策の効果を予測する際にも役立つ.
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