研究課題/領域番号 |
24510190
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片桐 英樹 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40325147)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ファジィ / 確率 / ネットワーク / 最適化 |
研究概要 |
本研究では,専門家・熟練者の知識に含まれる曖昧さ(ファジィ)と需要などの確率的不確実性が存在する環境における産計画や物流問題をネットワーク計画問題として定式化し,競合目的を考慮した多目的最適化モデルを提案するとともに,各目的に対する満足度のバランスを考慮した満足解を実用時間内に導出するアルゴリズムを開発することが目的とする. 本年度は生産計画やネットワーク計画,確率計画,ファジィ確率計画など本研究課題に関連のある従来研究成果の調査を行った.また,生産コストや輸送コストがファジィランダム変数で表される状況での生産計画および輸送計画をファジィランダム多目的計画問題として定式化した. 具体的には,景気や天候などの確率的に変動する状況を複数のシナリオ(それぞれに生じる確率が与えられている)で表現し,可能性理論と確率計画に基づく新しいモデルを提案した.目的関数の係数に対応する生産コストなどがファジィランダム変数で表されているため,目的関数自体に曖昧性と確率的不確実性が同時に含まれ,通常の確定的なモデルでは取り扱うことができない.ここでは「ファジィ目標が達成されると期待できる可能性の最大化(期待可能性最大化)」を最適化の基準として,新しいパレート最適解を定義し,意思決定者との対話を通して解を逐次解を更新しながら,複数の相競合する目的をバランスよく考慮した満足解を最終的に導出するアルゴリズムを構築した.特に決定変数が0-1変数で表されるときには,コスト係数の曖昧さの度合いがシナリオごとで異なる場合でも厳密な最適解が得られることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来研究の調査は予定通り行い,モデル化についてはネットワーク計画問題に対する定式化はできなかったものの,0-1計画問題に対するモデル化では想定以上に興味深い結果を得ることができ,全体として順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
確率的不確実性と曖昧性を同時に考慮した新しいモデル化のためには確率計画法に対する深い理解と十分な知識,さらに最新の研究成果を取り入れていくことが重要となる.確率計画法は日本では十分に研究が進んでおらず,本研究の成果をより高いレベルにするためには,確率計画法を専門とする海外の一流研究者との直接の意見交換を行い,また,彼らの最新の研究成果を踏まえた上で新しいモデル化などを行っていく必要がある.このような状況を踏まえ,今後は,確率計画法での第一人者であるシカゴ大学のBirge教授らとの意見交換の場を積極的にもつことを考え,さらに高いレベルでの研究を推進することを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に提案するモデルではファジィランダム変数で表される目的関数に対して可能性測度に関する確率的期待値を最大化しており,分散などリスクを考慮していない.そこで,25年度では可能性測度に関する分散最小化モデルやcVaR (conditional Value at Risk)モデルの提案を行う予定である.また,不確実性下のネットワーク最適化として,確率的巡回セールスマン問題(probabilistic traveling salesman problem)に対する拡張を考え,現実の問題に現れる先行順序制約や曖昧性などを取り入れた定式化および解法を提案する予定である.
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