本年度は,本研究計画当初に設定した課題そのものに対する成果ではなく,途中から新たな課題として取り組んだ関連課題の成果が中心となった. まず,ポートフォリオのリスク推定後には,そのリスクへの部分ポートフォリオの寄与を推定することがリスク管理上重要になるが,寄与の推定手法に関する論文が英文学術雑誌に採択された.ここで提案した手法は本研究課題で検討しているモデルにも適用可能であるため,モデルの拡張時に役立つ成果と位置付けられる.また,観測確率下における主成分分析型金利モデルと,リスク中立確率下における無裁定確率金利モデルを統一的に扱う金利リスク計測モデルについて検討したところ,ある条件のもとでは存在しうることがわかり,その条件を示した論文が査読付英語論文集に掲載された.現在は,実務で使い易くするためにマルチファクター化を行い,現在はデータを用いた実証分析を進めている.このモデルも,経済環境を意味する複数の潜在変数を導入することで本研究計画の当初からの課題と連結させることができる.さらに,前年度の成果であるRMBS価格付けモデルの改良を検討し,日本語論文にまとめて投稿した. 昨年度投稿したリスク管理モデルの英語投稿論文に関しては,返却時の査読レポートに沿って改訂中である.また,連続時間モデルへの拡張に関しては,レジームスイッチングに基づくリスク計測モデルとなるため類似の前例がない.そこで,その場合の価格付け理論から調べたところ,近年ようやく成果が出始めたばかりで,現在はそれらを基礎にモデル全体を構築し直し,論文として執筆中である. また,リスク管理上今後有望と思われる理論と実務上の重要課題についてまとめた書籍に編著者として携わり,2014年度に刊行した.その中で,本研究課題と密接に関連するレジームスイッチングモデルを有望な理論の一つとして取り上げた.
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