研究課題/領域番号 |
24510198
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
椎名 孝之 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (90371666)
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研究分担者 |
徐 春暉 千葉工業大学, 社会システム科学部, 教授 (70279058)
高嶋 隆太 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (50401138)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 数理計画法 / 確率計画法 / 整数計画法 / 分枝限定法 / リスク測定 / VaR / サプライチェーンマネジメント / 発電機起動停止問題 |
研究概要 |
(1)確率計画法の理論、解法アルゴリズムの研究については、変動に応じた追加決定を表すリコース変数に整数条件を有する多段階確率計画問題および、費用の変動の分散を考慮した確率計画問題を対象として、既存研究の調査と問題点の検討を行った。このような大規模シナリオおよび整数条件を有する問題を解くことは非常に困難である。罰金または追加費用を表すリコース関数が非凸型になりしかも非連続になる場合があるからである。今年度は Shiina-Tagaya-Morito(2007)や、椎名-多ヶ谷-森戸(2010)で開発した分枝カット法の効率化を検討した。 (2)期間市場リスクのモデリング方法については、確率計画に基づき期間リスクを反映出来る指標を提案し、その指標に基づくリスク測定方法を分析した。VaRは現在リスクの標準指標になっていることから、一定期間にある確率で起こりうる最大損失をリスクとする考えを継承し、計画期間内のリスクを反映できるように、期間VaRを期間リスクとすることを考慮した。期間内の市場変動に関して、適切な仮説を導入してそれに基づく期間VaRの解析的な数値計算方法を検討した。 (3)SCM、発電機起動停止における最適化問題への応用を検討した。サービスと在庫の両者を同時に改善するためのサプライチェーンの構築には、多くの投資費用が必要である。在庫転送に関する従来の研究では、予防的または緊急的という2つの在庫転送方策が別々に研究されているが、それぞれ一長一短がある。本研究ではこれらの方策の併用を考え,確率計画法によって定式化し、効率的な解法の検証を行う。また発電機起動停止問題は、エネルギー需給の問題として重要性が高い。今年度は従来法の効率化を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
確率計画法の理論、解法アルゴリズムの研究については、整数条件を有する問題への逐次線形近似法および分散を考慮する問題への分枝カット法による解法アルゴリズムの開発を行っており、これらの有効性を示すことが可能である。 期間市場リスクのモデリング方法についても、分析が進行しており、新たな計算手法を示す予定である。 SCM、発電機起動停止における最適化問題への応用に関しても、数理計画モデルと効率的な解法を開発している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)確率計画法の理論、解法アルゴリズムの研究については、以下のような解法アルゴリズムの研究を行う予定である。確率計画でよく用いられる分解法であるL-shaped法は、多段階の計画問題を初期段階の初期決定変数のみを含む小規模な問題に変換する方法である。追加の決定から生じる費用は計算困難であるため、理論的分析を行った結果を用い、追加費用関数が連続かつ近似の容易な領域に分割することによって問題を解く分枝カット法などのアルゴリズムの開発を予定している。 (2)期間市場リスクのモデリング方法については、期間VaRの定義と計算方法を明らかにした上で、それに基づく資産運用モデルの解析方法を検討する。期間VaRをリスクとして、他の投資制約条件を取り入れる資産運用モデルは確率計画モデルになる。このようなモデルを如何に効果的に解析するかを研究する。 まず、最適解を導くアルゴリズムの提案を試みる。次に、実用性を考慮し、線形計画法のような汎用性の高いアルゴリズムを利用した解析方法を検討し、実用規模のモデルを解析出来る方法を提案する。非常に複雑なモデルに対して、最適解を求めないソフト的な解析方法を提案することも試みる。 (3)SCMなどの最適化問題への応用に関しては、対象となる問題を確率的整数計画問題として定式化した上で、この問題に対する解法アルゴリズムの開発を行う。まず確率変動制約を全てのシナリオについて記述することにより直接的に問題を解く方法が考えられる。これは、等価な大規模問題変換を対象とした、分枝限定法などの整数計画アルゴリズムの適用であるといえる。このような直接的な整数計画アプローチによると、計算時間が長くなるため最適解を求めることは困難であると予想される。従って、整数条件を考慮した分解型アルゴリズムによる解法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では今後解法アルゴリズムの開発および計算実験を行うため、プログラム開発において大学院生を補助作業に充てる費用として支出を予定している。 本研究の代表者は数理計画法および経営工学を専門とし、金融工学の専門家である徐教授、オペレーションズリサーチが専門の森戸教授(早稲田大学)を加えて、共同作業による技術的な検討、議論を深める。また、国内の研究協力者として、整数計画法が専門の今泉教授(東洋大学)、国外では確率計画法分野の第一人者であるBirge教授(シカゴ大学)や王教授(清華大学)らと以前から情報交換や共同研究を行っており、打ち合わせ旅費の一部はこのために利用する。 研究成果の外部への発信については、積極的な論文・研究発表を行う予定であり、国内外での学会などへの参加費用として使用する。
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