研究課題/領域番号 |
24510201
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松林 伸生 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00385519)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 協力ゲーム / 提携形成 / マーケティング |
研究概要 |
交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、本年度はまず、シリアルな多層サプライチェーン下で任意の企業がリーダーシップをとることを前提とし、その場合の垂直統合の安定的形成可能性について議論した。具体的には協力ゲームとして定式化した上で、その典型的解概念であるコア、仁、シャープレイ値を分析した。特に、本研究開始前の準備段階において部分的に明らかにされていた独占的サプライチェーンの結果をもとに、チェーン間で競争がある場合についてのモデル化と分析を加えたところが大きなポイントである。それらを通じて、垂直統合の安定的実現に向けた利益配分の方法や各プレーヤーの影響力の評価ということに関して、従来にはない新たな知見を導くことができた。 次に、次年度の研究計画の準備として、いくつかのマーケティング活動に関する戦略的意思決定の問題をゲーム理論の枠組みで分析することを行った。具体的には、1、ブランド企業における戦略的カスタマイズ、2、資金制約が非対称な企業間競争における戦略的な出店ロケーション、3、ナショナルブランドメーカーへの生産委託による小売企業の戦略的なプライベートブランド提供戦略、などである。これらに関して、非協力ゲームを用いて均衡分析を行うことにより、従来にはない戦略的示唆を得ることができた。しかしながら、1、と2、については、いずれも製造または小売企業単独としての意思決定、また3、については製造と小売の非協力的な関係下での意思決定のモデル化に留まっているため、これを次年度以降、戦略的提携の問題として展開させていくことが課題である。 最後に、ライバル企業間の水平合併についても、主に企業間の代替関係に非対称を仮定した場合について分析を進め、マイナーながらも新しい知見を導くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の項に記したように、多層サプライチェーンにおける安定的垂直統合の形成可能性に関する分析については、申請書における研究計画通りに進捗しており、次年度に計画されている研究に円滑に入れる状況となっている。一方で、安定的水平合併の形成可能性については若干進度が遅れ気味であり、次年度において重点的に取り組みたいと考えている。しかし一方で、申請書に25年度以降の計画として記載した、各種マーケティング活動における戦略的提携の分析については、研究実績の概要の項に記した通り、その準備を前倒しして実施し、十分な成果を挙げることができた。以上を総合的に勘案することにより、研究は概ね順調に進展しているとの自己評価を行った次第である。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した内容に従って、まず安定的垂直統合の形成可能性については、対象とするサプライチェーンをネットワーク型に拡張して引き続き研究を推進する予定である。一方で、安定的水平合併の形成可能性については、本年度以上にエフォートを配分して研究を推進していきたいと考えている。さらに、申請書では2年目の研究のメインであったマーケティング活動における戦略的提携の形成可能性については、今年度に検討を行った戦略的カスタマイズやプライベートブランドの提供について、サプライチェーンのモデルに拡張させることを推進していく。加えて、新たにプロモーション活動としてインストア広告をとりあげ、それに関する製造企業と小売企業の戦略的な提携活動についても検討を開始したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度同様、研究は机上検討を中心に行うため、書籍を中心とした消耗品が研究費の主要な使途の一つとなる。加えて、成果を内外の学会で発表する必要があるため、そのための旅費に多く使用する計画である。さらに、成果の論文誌への投稿や掲載に関する諸経費への使用も考えている。これらの計画に関しては申請書に記した通りであり、特に大きな変更はない。
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