研究課題/領域番号 |
24510201
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松林 伸生 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00385519)
|
キーワード | ゲーム理論 / 協力ゲーム / 非協力ゲーム / 提携形成 / マーケティング / プライベートブランド / 製品差別化 |
研究概要 |
交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、本年度はまず、前年度の研究において得られたいくつかの成果について、その内容をより精査するとともに、査読付き海外学術雑誌に投稿し、国際的な場への成果発表を行った。具体的に、1、シリアルな多層サプライチェーン下で任意の企業がリーダーシップをとることを前提とした場合の、垂直統合の安定的形成可能性と安定的利益配分に関する知見、2、ナショナルブランドメーカーへの生産委託による小売企業の水平差別型プライベートブランドの提供戦略、3、企業間の代替関係に非対称を仮定した場合の3または4企業間の水平合併の安定性に関する結果、に関する投稿論文について、いずれも本年度内に採択決定を受けることができた。 次に、交付申請書に記載した研究実施計画に基づき、垂直統合の形成可能性についてはネットワーク型の問題へと拡張させるとともに、いくつかのマーケティング活動に関する戦略的意思決定の問題をゲーム理論の枠組みで分析することを行った。特に後者に関しては、1、ナショナルブランドメーカーへの生産委託による小売企業の(1)垂直差別型、(2)カスタマイズ型、それぞれのプライベートブランドの提供戦略、2、インストア広告に関する製造企業と小売企業の戦略的な提携活動、などを分析した。いずれに関しても、協力または非協力ゲームを用いて均衡分析を行うことにより、従来にはない戦略的示唆を得ることができた。特にプライベートブランド戦略に関する研究については、既に現段階でサプライチェーン構造を取り込んだモデル化に成功できており、次年度に分析を精査する予定である。さらに、その結果と本年度に発表を完了した水平差別型プライベートブランドに関する結果とを併せることで、製販間でのプライベートブランドの戦略的提携に関する一連のモデル分析を完成させ、一定の結論を得ることができるのではないかと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の項に記したように、多層サプライチェーンにおける安定的垂直統合の形成可能性や代替関係が非対称な状況下での水平合併の安定性等、24年度において得られた主な成果が順調に査読付き海外学術雑誌に掲載されたことは、研究進捗の極めて順調な進展を意味していると考えている。また、申請書に25年度以降の計画として記載した、各種マーケティング活動における戦略的提携の分析についても、研究実績の概要の項に記した通り、特にプライベートブランドに関する製販提携に関して、十分な成果を挙げることができた。ただしその一方で、安定的水平合併の形成可能性の一般化については、当初想定よりも難しい問題であることが明らかになり若干進度が遅れている。しかし以上を総合的に勘案することにより、研究は概ね順調に進展しているとの自己評価を行った次第である。
|
今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」の項に記したように、安定的水平合併の形成可能性の一般化については、現段階で研究の進捗が遅れているため、最終年度で成果を得るべく、本年度以上にエフォートを配分して研究を推進していきたいと考えている。さらに、マーケティング活動における戦略的提携の形成可能性については、今年度に着手したプライベートブランドの提供やインストア広告に関する研究に関して一定の完成をさせられるよう、研究を推進していく。最後に、均衡・安定となる提携に関する既に得られた結果、並びに今後得られる結果の全てについて、交付申請書に記したように、それらを社会厚生的な観点で評価することについても併せて実施していきたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「現在までの達成度」の項に記したように、水平合併の分析に関する研究を中心としたいくつかの課題の進捗が遅れており、それらに関しては今年度中の成果発表ができなかった。そのため、これらは次年度に行うべく、それに必要な支出も次年度に繰り越すこととした。 本年度同様、研究は机上検討を中心に行うため、書籍を中心とした消耗品が研究費の主要な使途の一つとなる。加えて、成果を内外の学会で発表する必要があるため、そのための旅費に多く使用する計画である。さらに、成果の論文誌への投稿や掲載に関する諸経費への使用も考えている。こういった使用計画自体は申請書に記した通りであり、特に大きな変更はない。
|