本研究では、不動産に最新のファイナンス理論を適用するための理論構築と実証分析をすべく、2つの研究テーマに取り組むことを目的とする。 【研究テーマ 1】 不動産のリターンを高頻度な時間間隔で生成する理論と統計分析法の確立 【研究テーマ 2】 不動産のリスクとリターン特性の金融資産との比較解明 この目的を達成すべく、2014(H26)年度は、以下に述べる2つの研究項目に取り組むことにより、不動産のリスクとリターン特性を金融資産との比較しつつ解明する方法を提案し、その有効性を実証した。 (1) 前年度までに取り組んできた、不動産を一般的な金融資産と同列に扱うことを可能にする理論と統計分析方法について発展研究を行った。具体的には、動的均衡モデルの枠組みを拡張して、個々の不動産物件レベルで、仮想的な価格変化率データ、すなわち「擬似リターン」を生成し、それを用いた「リスク」と「リターン」などの指標を算定した。その上で、不動産の金融投資としての位置付けを考察した。 (2) 不動産投資における市場リスクを計測する2段階ファクターモデルを提案した。具体的には、第1段階ファクターモデルにより、不動産投資における市場リスクを計測する。続いて行う第2段階ファクターモデルにより、その市場リスクを不動産が保有する属性の線形結合で説明する。さらに、本モデルをわが国の不動産市場に適用し、不動産投資におけるリスクについて有用な知見を得た。つまり、不動産投資におけるリスクとリターンの基本的な振る舞いを調べた上で、どのような属性を持つ不動産のリスクとリターンが高いのか・低いのかを明らかにした。これより、不動産を金融資産と同様にポートフォリオ戦略に組み入れることが可能となり、不動産投資のリスクとリターン特性を金融資産と比較解明の枠組みや基本的な示唆を与えるものである。
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