研究課題/領域番号 |
24510207
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高田 祥三 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50120340)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経営システム / シミュレーション工学 / 循環型生産システム / 安全システム |
研究概要 |
平成24年度においては,以下の2項目の研究を実施した. (1) 環境調和型製品・サービスビジネスの事例分析 EcoPSSビジネスについて,精密工学会ライフサイクルエンジニアリング専門委員会において収集した百数十事例に加えて,さらに最近の事例を収集した.これらのEcoPSS ビジネスについて,環境負荷削減手段として組み込まれているライフサイクルオプションと,提供機能の構成(機能を提供するための製品とサービスの組合せ方法)および契約形態の組合せを分析し,対応表にまとめた.この結果から,ライフサイクルオプションと提供機能の構成,および提供形態の組合せには,一定の傾向が存在することが示唆された. (2) ライフサイクルオプションと提供機能の構成,提供方法との関係の整理 まず,製品・サービスの提供に関して,提供方法を特徴づける項目を,契約(所有,使用期間),使用(使用者,使用場所,使用方法),回収(回収者,回収場所),メンテナンス(メンテナンス方法,実施者)の面から検討した.また,これらの項目のとる値を組合せる際に考慮すべき制約を検討し,様々なPSSビジネスを表現する方法を示した. さらに,環境負荷削減方策としてのライフサイクルオプションについて,環境負荷削減のメカニズムを検討した.この結果を基に,オプションごとの環境負荷削減効果が,オプションが有する環境負荷削減能力とオプションの実行率によって表現できることを示した.また,提供方法項目の変化がライフサイクルオプションの効果に与える影響は,オプションの実行率(例えば適正使用なら,その実現率)の変化であることを明らかにし,ライフサイクルオプションの実行率を表現する指標を定義することで,提供方法を変化させることにより,ライフサイクルオプションの環境負荷削減効果をどの程度向上させることができるかを定量的に評価できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施の研究計画では,研究実施項目として,以下の2項目を挙げていた. (1) 製品ライフサイクル管理における環境負荷削減手段であるライフサイクルオプションと提供機能の構成,契約形態,提供プロセスとの関係の整理 (2) 環境調和型製品・サービスビジネスの事例分析 研究実績で述べたように,(1)については,順調に研究が進んでおり,定性的な対応の整理だけでなく,定量的な評価を行うための方法を示すことができた.これは,平成25年に予定している,EcoPSSビジネス評価のための,ライフサイクルシミュレーション開発の第1段階となるもので,当初の計画より1歩進めることができたと考えている.(2)についても,事例の収集と分類を行うことができたので,当初の目標は達成したと言えるが,(1)の分析結果と対応させて事例を分析するところまではいかなかった.これについては,平成25年度に予定している.EcoPSSビジネス支援法の検討の中で,さらに検討を深めていきたい. なお,平成24年度の成果の一部は,精密工学会秋季大会,4th CIRP IPSS Conference, および20th CIRP LCE Conferenceなどで発表することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年の成果を受けて,平成25年,26年は,当初の予定通り,研究を進める予定である.特に,平成25年は,以下の2項目について研究を実施する. (1) EcoPSS ビジネスの設計支援法の検討 平成24年度の検討結果を利用し,EcoPSS ビジネスの設計手順とその支援法の検討を行う.最初は,既存ビジネスを環境調和型ビジネスに転換することを想定して以下のような設計手順を検討する.まず,既存ビジネスのLCA に基づき,ライフサイクルのどの段階の環境負荷が大きいかを調べ,それを削減するのに適したライフサイクルオプションを選択する.選択されたライフサイクルオプションに対して,それが有効に作用するように平成24年度に検討した対応関係を基に,提供機能の構成と提供方法を決定する.例えば,原理的関係を用いて設計解候補を生成し,その中から事例分析での結果得られた成功パターンを基に,成功可能性の高いビジネス形態を選択し,それらを(2)で開発するライフサイクルシミュレーションで評価し最良なものを選択するといった方法を検討する. (4) EcoPSS ビジネス評価のためのライフサイクルシミュレーションの開発 EcoPSS ビジネスのような複雑系のシステムの定量的評価には,シミュレーションを用いることが有効であることから,循環型生産における製品ライフサイクルの各段階でのマテリアルフローを評価するためのLCSシステムを開発し研究に活用してきた.本研究では,これをEcoPSS ビジネスの評価に利用できるように改造を行う.具体的には,機能提供の構成,提供方法などの違いが,ライフサイクルオプションの実行率(例えば,リユースなら回収率や再使用可能率など)に与える影響を表現することで,LCA とLCC データベースを統合したライフサイクルシミュレーションにより,環境評価とコスト評価が可能なようにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
ライフサイクルシミュレーションシステムの開発費として1500千円を支出予定。 特注先は、㈱日立アドバンストデジタル社、納入予定はH26年1月。
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