研究課題/領域番号 |
24510207
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高田 祥三 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50120340)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境調和型生産 / ビジネスモデル設計 / プロダクト・サービスシステム / ライフサイクルシミュレーション |
研究実績の概要 |
平成26年度も,これまでの研究に基づき,(1) EcoPSS ビジネス設計支援システムの開発と(2) マネージド・ドキュメント・サービス(MDS)を例にしたケーススタディの実施について研究を進めた. (1)については,昨年度までに開発したEcoPSS ビジネス設計支援法に対して,顧客特性の違いを反映したサービス・提供方法の選択が可能なように改良を加えた.顧客特性は,各要求項目に対する重みで表現する.顧客要求項目とサービスとの対応関係を数量化したマトリクスを基に,顧客要求を満たすサービスの組合せを抽出し,さらに可能な提供方法(契約形態)を組合せてビジネス案を列挙する.これらのビジネス案の中から,トータルパーフォーマンス指標(コスト×環境負荷に対して提供される顧客価値の割合を表す指標)を最大化するビジネスモデルを選択する. (2)については,(1)で開発したビジネス設計支援手法をMDSに適用し,その有効性を確認した.500人の顧客と出力機器台数50台を仮定し,顧客インタビューに基づき,コスト意識の高いユーザ,メンテナンスの手間を省きたいユーザ,コア業務に集中したいユーザの3種類にユーザを分類した.ユーザの要求項目とサービスの関係は,ユーザが製品・サービスから価値を得るための負担がサービスによってどの程度軽減されるかの観点から評価をした.また,環境負荷削減効果は,サービスと提供形態によって,適正使用等の環境負荷削減に効果のある方策の実行率がどの程度向上するかによって評価した.これらの評価方法に基づき,ユーザカテゴリごとに,最適なサービスと提供方法の組合せを導出した.この結果,異なる要求項目に対する重みをもったユーザカテゴリごとに最適なサービスと提供方法の組合せが変化することが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度においては,研究目的として以下の2項目を掲げた. (1) 顧客特性を考慮したEcoPSS ビジネス設計支援システムの開発 (2) マネージド・ドキュメント・サービスを例にしたケーススタディの実施 研究実績で述べたように,両目的ともにほぼ順調に研究が進んだ.(1)については,顧客特性の違いを反映し,顧客要求を満足するサービスと提供方法の組合せを列挙することと,それらの解候補から,最適な組合せを選択するシステムを試作することができた.また,(2)についても,実際のMDSを基に,サービスの内容等を設定し,トータルパーフォーマンス指標を用いた顧客カテゴリごとの最適解を導くことができた.ただし,最適解の探索は,現状では全数探索になっており,サービス,提供方法の選択肢が増えると実質的に計算が難しくなる.この問題を解決するためには,効率的な近似最適化手法の適用が必要であるが,これについては,今後に残された研究課題となった.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度で研究期間が終了し,ほぼ当初の目標を達成することができたが,実用可能なEcoPSSビジネス設計支援システムにしていくためには,取り組むべき課題は少なくない. 今回のMDSに関する事例研究においては,製品,サービスの選択肢については,既存のビジネスを参考に設定した.しかし,新規製品の場合,あるいは既存製品でもPSS的なビジネスがほとんど行われていない場合に,検討対象とするサービスメニューや提供方法を導出する手法が必要となる.当然この際には,顧客要求に加えて環境負荷削減効果についても考慮する必要があり,組織的な方法の検討が望まれる. また,本研究の手法は,複写機以外のOA機器に対しても適用可能と考えられるが,その範囲については,さらなる検討が必要である.本EcoPSSビジネス設計支援システムをOA機器以外の製品に対しても適用可能なものに発展させていくためには,顧客要求項目,製品が提供する機能,サービス,提供方法,および環境負荷削減効果の間の関係について,より広い観点からの体系化が必要であり,今後の研究課題と言える.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は(1)EcoPSSビジネス設計支援システムの開発,(2)マネージド・ドキュメント・サービスを例にしたケーススタディを行ってきた.その成果を精密工学会春季大会で発表予定だったが,提供サービス,提供方法,ライフサイクルオプションの組み合わせごとに,コスト,環境負荷の評価を行う部分で,予想以上の計算時間を要したため,発表を見合わせ,新たに近似計算の方法を検討したことにより未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
上記の近似計算方法を用いて行った評価結果を基に,提案する設計支援システムの有効性を検証した結果および残された問題点を整理した結果を報告する場として,精密工学会秋季大会(2015年9月)を予定しており,未使用額については,その国内旅費に当てることとしたい.
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