研究課題/領域番号 |
24510209
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
八木 勲 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (10457145)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ファイナンス / 人工市場 / 市場規制 |
研究概要 |
これまでに提案された人工市場および空売り規制モデルは非常にシンプルなモデルであったので、本年度は、人工市場(特にエージェントの売買ルールに関する部分)と空売り規制モデル(特に空売り規制期間に関する部分)を詳細化し、さらに現実市場がもつ特性に近づくよう精度を上げた空売り規制検証システムの開発を試みた。その結果、空売り規制が発動されている市場ではバブルが発生する可能性が、空売り規制のない市場と比較して高いことがわかった。それに伴い、収益率ボラティリティも空売り規制のない市場より高くなることが判明した。さらに、この実験を行う過程でリバーサル現象についても再現することに成功し、そのときのエージェントの動向から本現象のメカニズムを解明することができた。 一方で、空売り規制以外の主要な市場規制の1つであるレバレッジ規制のモデル化を、空売り規制モデルを参考に試みた。はじめにエージェントの初期保有資産を変更し実験することでレバレッジ規制が市場に与える影響を観察した。その結果、初期保有資産が大きくなればなるほど、収益率ボラティリティは大きくなり暴騰暴落が発生する可能性が高くなった。空売り規制が発動されているときはそれが顕著であった。次に、より現実に即したレバレッジ規制モデル(取引の途中でレバレッジ率を変更可能とする)を用いて実験を行った。市場価格が上昇している過程でレバレッジ率に制限がかかると、それまで大きく空売りしていたエージェントの強制決済が発生し、市場価格がさらに急上昇していく、いわゆる踏み上げ相場が発生することが確認できた。さらに取引中にエージェントが低価格で注文を誤発注してしまった場合の実験も行った。このとき誤発注が短期的であっても、市場価格は下降トレンドがしばらく続いた後、ゆっくりと適正価格へ戻ってくることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空売り規制に関しては、これまで以上に規制モデルと市場モデルを現実に近づけた環境にて実験を行ったところ、シンプルなモデルの実験結果とほぼ同様の結果が得られた。さらに当初予定していなかったリバーサル現象のメカニズムについても解明することに成功した。 一方、レバレッジ規制に関しては当初予定より現実的なモデル構築を行うことができた。その結果、当初得られる予定のなかった結果(踏み上げ相場など)まで得られることに成功し、その成果を情報処理学会および人工知能学会にて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画は計画通りの進捗であったので、来年度は予定どおり,他の市場規制(値幅制限(ストップ高・ストップ安)など)が市場に与える影響を人工市場にて調査し、これらの規制の妥当性を判断していきたいと考えている。また、本研究にて調査した市場規制を、どのように組み合わせると市場安定化に効果的か、を調査する統合型市場規制システム構築の検討に入る。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度研究費の一部未使用についての理由は次の通りである.1)研究調査(2回のうち1回)を次年度に繰り越すことしたため渡航費等が未使用となった.2)論文投稿時期の都合で掲載費の支払いが翌年度になった.3)プログラムの一部を学生アルバイトではなく自作し,余剰分を再来年度のシステム構築のアルバイト代に振り替えることにした. 今年度の研究費使用計画は次の通り.1)海外にて研究調査(1回)および成果発表(2回)を行う予定である(約30万円/回).2)研究調査用図書を購入予定(約30万円).3)論文を投稿予定(掲載費:約30万円).4)研究補助学生向けPCを購入予定(約20万円),5)その他消耗品(プリンタトナー,印刷用紙等)を購入予定(約10万円)
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