研究課題/領域番号 |
24510212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
石川 温 金沢学院大学, 経営情報学部, 教授 (90308627)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済物理学 / ジブラ則 / 反転対称性 / ベキ分布 / 成長率分布 / 付加価値 / 非ジブラ則 / 対数正規分布 |
研究概要 |
売上・利益・資産・従業員数など企業規模を表す量の成長率分布は、初期規模に依存して変化する((非)ジブラ則)。そしてその変化の様子は、売上と利益で異なる。本研究では、日本および世界各国の詳細な企業財務データを用い、様々な企業規模量の非ジブラ則を明らかにする。詳細な財務データより計算可能となる、各企業の生み出す付加価値や技術力という企業規模量も分析対象とする。これら企業規模量の成長率を種類別に見積もることにより、企業や国にとって最も重要な付加価値の成長が、技術力・資産・従業員数など、どの企業規模量に起因しているかを統計的に明らかにする。 当該年度は、一橋大学が所蔵している、帝国データバンク社作成の“企業財務データ”“企業概要データ”“企業信用調査データベース”、そしてビューロヴァンダイク社作成の“世界各国の企業財務データベース”を利用して以下を実行した。 従来より経済学では、生産は技術力・資産・労働力で決定されると考え(生産関数と呼ばれる)、データに最も当てはまりの良いものとして、経験的にコブ-ダグラス型生産関数が採用されてきた。我々の研究により、生産関数がコブ-ダグラス型になる理由を、変数間に観られる準空間反転対称性とジブラ則で説明できることが示された。また、詳細な財務データを用いれば、コブ-ダグラス型生産関数に個々の企業の生産・資産・労働力を入力することにより、各企業の技術力が算出できる。我々は、売上・利益・資産・従業員数データと同様に、付加価値や技術力も大規模域でベキ分布することを確認した。 本研究の結果、ベキ分布の指数を見ることにより、生産(付加価値)に一番大きな影響を与えているのは技術力、資産、従業員数のどの量なのかを国別・業種別に明らかにすることが出来るようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の詳細で網羅的な企業財務データベースを用い、資産・従業員数データの時間反転対称性・成長率分布の形状・(非)ジブラ則・ベキ則(ベキ指数)・対数正規分布(標準偏差)などを観測し、各パラメータの測定分析を終えた。また、各企業の産み出す付加価値・技術力を算出した。ここまでの研究は、計画通りに進行している。 また、コブ-ダグラス型の生産関数を用いて、各企業の技術力を算出するには、コブ‐ダグラス生産関数のパラメータを正確に決定する必要がある。我々の研究では、それは準反転対称性の対称平面を正確に決定することと等価である。既に、データの平均値を用いる簡単な手法で対称平面を決定する事により、各企業の技術力の統計的性質を明らかにした。現在、地形図の尾根谷を測定する指数(尾根谷度)を用い、より厳密に対称平面を決定する手法の開発に取り組んでいる。 そのため、技術力については、成長率などの分析を今後の課題として残している。
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今後の研究の推進方策 |
日本および世界各国の詳細で網羅的な企業財務データベースを用い、各企業の産み出す付加価値・技術力を算出する。技術力の算出については、現在研究中である地形図の尾根谷を測定する指数(尾根谷度)を用いる。そのようにして測定した量に対して、時間反転対称性・成長率分布の形状・(非)ジブラ則・ベキ則(ベキ指数)・対数正規分布(標準偏差)などを観測し、各パラメータの測定を行う。 また、付加価値は技術力・資産・従業員数で決定されると考え、付加価値およびその成長率は、技術力・資産・従業員数の主にどの変数に大きく影響を受けるかを調べる。 以上の分析を業種別・国別、あるいは企業単位・業種単位・国単位という集計単位別に行い、それらによる違いを比較し、付加価値の成長に関する統計的法則を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度、ほぼ計画通りに研究は進めることが出来たが、体調を崩したため計画通りの研究打合せ及び研究発表を行うことができなかった。そのため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。その研究費は以下の旅費等に重点的に割り当てることとし、翌年度以降に請求する研究費と合わせて、以下の研究を行う。 本研究には、詳細で網羅的な企業財務データ等が必要不可欠である。そのデータベースは、東京の共同研究者が入手・保存・管理している。彼らと綿密な研究打ち合わせを行うためには、電子メール等だけではなく、直接会う機会を設ける必要がある。本学で割り当てられている個人研究費の不足分を補う形で、本研究費をその旅費に当てる。 本研究には、経済物理学の新しい知見、および大規模データの統計分析に関する知見が必要となる。そのため、関係図書およびソフトウェアの購入を計画している。 本研究では、異なる国の経済を研究した成果を比較検討することは非常に重要である。国内だけではなく、国外の研究者とも議論を重ね、成果を発表して情報を交換し、それを基にさらなる議論を積み重ねることは、本研究に非常に有益だと考えられる。本学の個人研究費では外国旅費はサポートされないので、本研究費をその旅費に当てる。
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