研究課題/領域番号 |
24510212
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
石川 温 金沢学院大学, 経営情報学部, 教授 (90308627)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済物理学 / ベキ成長 / 非ジブラ則 / 企業年齢分布 / 企業活動崩壊率 / 成長則 |
研究実績の概要 |
当該年度は、ビューロヴァンダイク社作成の〝世界各国の企業財務データベース(ORBIS)”、北米上場企業の50年以上に渡る企業財務データベース(Compustat)、および日本上場企業の50年以上に渡る企業財務データベース(日本政策投資銀行データ)を利用して以下を実行した。 まず、ORBISに含まれる日本企業およそ100万社のデータを用い、企業の年齢分布が指数関数で近似されることを確認した。また、2008年と2013年における企業の活動状態を比較することにより、その崩壊率が企業年齢に依存しないことを発見した。年々誕生する企業数が一定とみなせるとき、原子核崩壊と同様、これら2つの観測結果は定性的に無矛盾である。さらに、企業年齢分布が従う指数関数のパラメータと、企業活動の崩壊率を比較し、それらが定量的にも無矛盾であることを確認した。同時に、この結果を用いて、第2次世界大戦以前に年々誕生した企業数と企業活動の崩壊率を見積もった。 次に、Compustatと日本政策投資銀行データに含まれる、上場企業数千社の50年以上に渡る売上の変化を分析した。成功を収めた上場企業の多くは、緩やかな成長とは全く異なる爆発的な成長を経験している。多くの場合、この爆発的な成長はベキ則に従っており、その指数は1から10の間にある。このベキ的成長は、連続する2年の売上の条件付き成長率分布に観られる非ジブラ則と関係している。非ジブラ則では、初期値が小さければ成長する確率が大きくなる。我々は解析的に、非Gibrat則とベキ成長を関係付け、ベキ成長の指数が、非ジブラ則のパラメータ(成長率分布の変化率)に反比例することを示した。さらに数値シミュレーションにより、非ジブラ則からベキ成長が高い確率で生成されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度以前の研究では、詳細で網羅的な日本の企業財務データを用い、資産・従業員数データの時間反転対称性・成長率分布の形状・(非)ジブラ則・ベキ則(ベキ指数)・対数正規分布(標準偏差)などを観測し、各分布パラメータの測定分析を終えた。また、各企業の生み出す付加価値・技術力を算出し、その算出に必要なコブ‐ダグラス型の生産関数のパラメータを正確に決定する手法を開発した。また、企業が有する出願特許数に関する分析を行い、企業の技術力と出願特許数に相関があることを明らかにした。 当該年度の研究では、企業年齢分布が指数関数に従うことと企業活動崩壊率が企業年齢に依らず一定であることを定性的・定量的に関係付けた。また、北米と日本の上場企業の多くがベキ関数に従う成長を経験していることを見出し、それを非ジブラ則により説明できることを示した。 これら当該年度研究成果の前者は査読付き論文の掲載が決まっているが、後者は未だ投降中であるため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、様々な企業規模量の成長則を明らかにすることである。 これまでの研究では、数年から十数年の短期的な成長則にのみ注目してきたが、当該年度の研究により数十年に渡る長期間の企業規模量の成長則が明らかになり、それが短期的な成長則である非ジブラ則と関係付けられた。今後は、この上場企業の長期的な成長則が、非上場企業にも当てはまるかを検討する。さらに、企業規模量以外の経済量である個人所得や株価の長期的な変動との関係も検討する。 また、日本企業に関して企業の年齢分布と企業活動崩壊率を明らかにしたが、今後は日本以外の国について同様の分析を進める。そして、企業活動の停止を含めた企業の成長則を明らかにしたい。
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