研究課題
当初研究計画は以下の通りである。一橋大学のサーバーコンピュータに保存されている帝国データバンク社作成の日本企業財務データベースを利用し、以下1)~3)を実行する。1) 資産Kおよび従業員数Lデータに観られる反転対称性・成長率分布・Gibrat則・非Gibrat 則・ベキ則・および対数正規分布などを観測し、それらを特徴づけるパラメータを測定する。2)各企業の生み出す生産Yを計算し、生産Yは企業の技術力A、資産K、従業員数Lにより決定されているというCobb-Douglas生産関数を仮定して技術力Aを算出し、YとAに対して1)と同様の観測と測定を行う。3)生産YがCobb-Douglas生産関数により決定される場合、生産Yの成長に最も影響を与える企業規模量(A,K,L)を特定する。さらに、以上1)~3)より得られた知見を用いて、企業の統計的な成長戦略を議論する。研究成果等は以下の通りである。上記1)~3)の分析を終え、正値のみをとる資産K・従業員数Lは、売上と同じ第1非Gibrat則に従うことを発見した。また、生産Yを決定するCobb-Douglas生産関数と、(Y,K,L)に観られる反転対称性との等価性を証明した(ここで、Aは残差)。また、技術力Aは他の企業規模量と同じく、高額域でベキ分布に従い中額域で対数正規分布に従う性質を持つこと、生産Yに最も影響を与える企業規模量は従業員数Lであることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
当初研究計画の1)~2)は予定通り完了し、3)に対しても『生産Yに最も寄与するのは(資産Kや技術力Aではなく) 従業員数Lである』という結果が得られた。これは与えられたデータの範囲内では正しいが、技術力Aの生産Yへの寄与が小さいという結果は予想外だった。この分析では、データベースに記載されている有形固定資産を資産Kとして用いたが、そこには企業の持つ有形の技術力が含まれている。その結果、技術力Aにはアイデアや特許、経営戦略など純粋に知的な技術力のみが含まれ、生産Yへの寄与が相対的には大きくなかったと考えられる。
当初の研究計画の1)~3)に対しては、おおむね順調に進展しているので、最終年には企業の統計的な成長戦略を議論する。昨年度、短期的な成長則から長期的な成長則が導かれることを示したので、その知見も用いて議論を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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