研究課題/領域番号 |
24510213
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
辻村 元男 同志社大学, 商学部, 准教授 (40335328)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | リアルオプション / 汚染物質削減 / 特異確率制御 / 確率インパルス制御 |
研究概要 |
本研究課題は,リアルオプション評価法を用いて汚染物質削減投資プロジェクトの評価モデルを開発し,現実の問題に応用することである。 本年度は,先ず,前年度から継続して分析をしていた代替的な技術についての研究開発投資についての研究を実施し,企業の最適な投資戦略を明らかにした。 次に,2つの汚染物質削減投資プロジェクトについて平行して考察した。1つめのプロジェクト(P1)は,排煙脱硫装置などの比較的小型の汚染物質削減装置への投資プロジェクトについて考察した。経済活動の成長に伴い汚染物質が副産物として発生するため,経済成長に応じて1度のみならず何度でも汚染物質削減装置への投資が必要となる場合を想定している。比較的小型の投資プロジェクトについて考察しており,投資プロジェクトの実施には装置の購入費用のみを考慮している。このような企業のプロジェクトへの投資問題を特異確率制御問題として定式化して問題を解き,最適な汚染物質削減投資戦略を求めた。さらに,いくつかの重要なパラメータについて比較静学を実施し,実際の企業の意思決定への示唆を明らかとした。 2つめのプロジェクト(P2)は,CCS(Carbon Capture and Storage)や火力発電所が既存の発電設備から高効率のコンバインドサイクル発電設備に更新するなどのように,比較的大規模な汚染物質削減投資プロジェクトについて考察した。更に,最初のプロジェクトでは,汚染物質のフローの削減のみを考慮していたが,こちらのプロジェクトでは,汚染物質のフローとストックの両方を削減する場合について考察している。大規模な設備を措定しており,設備の購入費用に加え,固定コストも考慮した。このような投資問題を絶対連続制御問題と確率インパルス制御問題の混合問題として定式化し,最適な汚染物質削減戦略を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って研究を進めており,その結果である研究成果は,まだ公刊されていないが,代替的な技術についての研究開発投資に関する論文(Tsujimura, 2013)が採択されている。また,それ以外の2つの汚染物質削減投資プロジェクトについても,国際会議で積極的に発表し,国内外の研究者と意見交換し,今後の研究の進展を促すように努めた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度については,研究計画に従い以下のように研究を進めていく。先ず,汚染物質削減プロジェクトP1について,本年度は企業が生産するアウトプットの価格が定数であったが,価格が確率微分方程式に従って変動する場合について考察を拡張し,アウトプット価格の変化による影響について考察する。 次に,汚染物質削減プロジェクトP2について,最適な投資戦略を数値的に示し,汚染物質蓄積に関する不確実性の程度,汚染物質の損害弾力性,汚染物質削減費用など,いくつかの重要なパラメータについて比較静学を実施し,実際の投資プロジェクトへの示唆を明らかにする。 最後に,両プロジェクトについて,技術進歩の影響を考慮し,最適な投資戦略を導き出す。汚染物質削減政策などの環境政策においては,技術進歩の果たす役割は大きく,そのことを考慮し現実の政策の意思決定への示唆を明らかにする。 以上の研究を推進するために,国際会議・学会や研究会に積極的に参加し,研究報告すると共に,他の研究者と意見交換をする。これらを通じて研究を深め,学術的あるいは社会的に,より貢献できる研究として推進する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|