研究課題/領域番号 |
24510214
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
荒川 雅裕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70288794)
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キーワード | 製品・技術プラットフォーム / データベース / e-BOM,m-BOM / 多目的最適化法 / 工程設計 / 製品設計 / 混流生産 / 部品・部品構造 |
研究概要 |
平成25年度では主に生産工程(製造方法)のアーキテクチャに着目し,生産性を高めるための生産ラインの設計方法と自動化アルゴリズムを開発した.この方法では生産性を高めるため,ラインバランシングとともに作業時間の変動を削減する要素作業の工程への割付け案を作成するとともに,工程間の作業時間差や作業時間の変動による生産のブロッキングやスタベーションによる生産性の抑制するためのバッファ量と配置の最適案の作成をエージェント・シミュレーションの利用によって実現した.要素作業の工程への割付け案の作成においては,生産ラインのサイクルタイムと全工程の作業時間の分散量の最小化を目的関数とする多目的問題として取り扱う多目的遺伝的アルゴリズムを開発した. さらに,多品種生産に対応するため,上記の工程設計法を拡張し,複数製品の部品構造や製造方法の類似性と要素作業の関連性から階層型クラスタリング法によって複数の要素作業を組合せ,その組合せを各工程へ割り付ける操作を行った.この操作により,同一作業および類似作業を同一工程に割り付けることができ,“作業性”が向上する工程設計案を生成することができた.これにより,e-BOM,m-BOMによる製品の部品構造や要素作業の特徴から高生産性を目的とする生産ラインの自動設計が可能となった. また,製品の企画・設計に関するフレームワークの構築として,既存製品の機能の特徴と部品・部品構造を関連付けしたデータ構造を設計した.そして,Web上のreviewから顧客の評価や感性情報から特徴的な部品・部品構造を抽出し,組み合わせることで顧客要求にマッチした新製品の基本設計を行う意思決定の支援システムを提案し,データ構造を含む情報システムを開発した.今後,PLMシステム内のe-BOMやm-BOMと連携するとともに,製品設計の上位業務における複雑な意思決定の仕組みとして発展させていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに目的とするデータベースシステムの開発が70%ほど進んでいる.本年度は,製品の部品・部品構成に関する生産ラインの設計(工程設計)のシステム化を中心に行った.本研究は既に数本の学術論文に計算され,また,国際学会の受賞も受けている.一方で,より上流の業務である基本設計の効率的な方法を部品・部品構造と関連付けて意思決定する仕組みを開発しており,PLM全体を統合化した情報システムの構築と各種設計における意思決定のアルゴリズムや支援システムの開発を行えている.意思決定の自動化や支援システム化として改善の余地はあるが,生産プロセスの上流(製品の企画・設計)から生産準備の効率化と生産性向上を満たす生産プロセスの構築までのおおよそPLM全体をカバーする意思決定の仕組みやフレームワークの構成要素が開発できたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成26年度)は研究の最終年度であり,開発中のデータベース・システムを完成させる.また,これまでに部分的に開発済みである作業困難さを評価し,部品配置を自動設計するためのアルゴリズムの開発を行い,データベースシステムと連携させる.これにより,製品設計と作業設計の同時設計を行う仕組みをつくるとともに,異なる設計間での情報交換を行うデータベースシステムの仕組みを実現し,同時設計の効果を調べる.部品配置を自動設計するためのアルゴリズムの開発では,これまでに開発した多目的進化型アルゴリズムを拡張し,上記のデータベースシステムを通して異なる設計情報を連携することで実現する.作業困難さの評価と部品配置の設計においては評価項目に対する重回帰分析と実験計画法の情報を連解させる仕組みを組み込み,部品配置によって作業困難さを評価するアルゴリズムとして構築する.(この計算方法は既に調査済みであり,現在,情報システム化を進めている.)そして,部品配置と部品組み立て順序を変化させ,作業を容易にするとともに作業時間最小とする配置案と部品組み立て順序を決定するアルゴリズムを開発する. これまでに開発した生産ラインの工程設計システム,製品のモジュラーデザイン支援システム,顧客評価を利用する新製品の基本設計作成システムを,各サブシステムで利用するデータをデータベース内で連携することで,製品設計から製造設計の間のPLMを管理するフレームワークを完成させる.さらに,各サブシステムにおいて必要とする情報を精査するとともに,ファミリー製品を対象とする時系列的な製品開発と製造準備・作業設計の情報を管理する.これにより,製造・品質がコアな技術情報の管理を抽出して維持運用させることで競争力の高い製品の開発を長期的に維持する仕組みを提案するとともに情報システムの事例として本研究で開発したシステムを広く発表していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の金額入力時点では,3月に発注した数理解析用ソフトウェアの納入が遅れており,支払いが年度末になってしまったため.(すでに納品され,支払済み.)また,論文の掲載料の支払いが雑誌の印刷後に領収書等が送られてくるため,支払が遅れている. 今年度分の繰り越し分として,数理解析用ソフトウェア(Text Mining Studio:NTTデータ数理システム)の支払い(380,000円),および,論文掲載料(1本)の支払い(100,000円)を予定している.次年度の助成金でははコンピュータ(1台),論文掲載料(2~3本),国際学会参加費(2回),英語論文校正費(英語論文3本)の支払いを予定している.
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