研究課題/領域番号 |
24510223
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小浦方 格 新潟大学, 産学地域連携推進機構, 准教授 (30401772)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域間連携 / 減災 / 事業継続計画 / 相互支援協定 / 産業構造 |
研究概要 |
公的に実施,公開されている各種統計データ(国勢調査,事業所企業統計調査,工業統計等)を用い,製造業に注目した際の地域の産業構造を表わす項目を抽出し,主成分分析により地域の類型化を行い,さらに主成分得点の相関係数を求めることで,二地域間の産業類似性を求めた。この結果と,GISによる到達圏解析による時間距離とともに考慮することによる,好適なパートナー地域探索手法を提案した。鉄工,電子・電気機器,食品等の製造業が盛んな新潟県小千谷市を例にとると,相関係数が大きな地域としては長野県安曇野市,同上田市,山形県東根市が該当した。相関係数によるパートナー地域探索手法の妥当性を検証するため,相関係数に応じた地域間の企業取引状況を,市販の企業情報を用いて調査したところ,直接取引関係は必ずしも多くはなかったが,概ね相関係数に応じて大きくなる傾向が見られた。さらに,信用調査会社が有する企業相関情報により,二次的な取引関係(同じ販売先,同じ仕入先)の有無をネットワーク分析により調査した結果,定性的ではあるが,相関係数の大きな地域ほどネットワークによるつながりが大きいことが示され,本手法は概ね妥当であるとの結論が得られた。この結果は,平成24年度日本地域学会にて報告し,学術論文として投稿済みである。ただし,特に高速道路で直接つながらない東根市での聞き取り調査では,小千谷市との連携については距離感が障害となる様子が強く窺われている。本研究で提案する地域間連携は,非常時における相互支援も大きな目的の一つであり,今後はこの距離感の克服が課題と考えられる。また,本研究は一部の製造業にのみ注目しており,その他の産業が優勢な地域にも適用できるかは検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り,各種統計データを用いて好適なパートナー地域の探索を行い,さらに詳細企業情報によりその妥当性も概ね示すことができた。企業間のネットワークは,ネットワーク分析を適用し,定量的評価にまでは至っていないものの,本手法により好適なパートナーとして挙げた二地域間には,共通のノードを介して強い紐帯が存在することが示唆された。前記の通り,研究成果は学会にて発表され,同発表に対して高い評価が得られたこともあり,学術論文としても投稿済みである。また,一部の地域に対しては計画を前倒ししてヒアリング調査を開始しており,その結果を次年度以降の調査研究に活用することとなる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では,H24年度に行った統計データによる分析を基に,いくつかの地域を具体的に絞り込み,現地調査,インタビュー等により実際のパートナーシップ構築への手がかりと,連携による具体的交流活動の準備を行う。ある程度の遠隔にある地域間の連携にあっては,上述のとおり距離感が大きな障害となり得るが,統計データ分析やネットワーク分析の結果を提示することで,連携当事者にとってのインセンティブを惹起できるかが課題である。地域としての取り組みであることから,企業単独の活動に留めるだけでなく,商工会議所や同業者組合の関与,推進力が鍵であると考えられる。これまでのヒアリング調査によれば,強い地域産業間の相関が示されていても,これら地域間連携の推進母体となり得る社会インフラの成熟度によっては,連携の具体的活動に至らないこともあると思われる。一方,各地域には大学の地域共同研究センターなど,地域の企業が集う場やシステムが多かれ少なかれ存在する。本研究の代表者や連携研究者は,全国の各大学とのネットワークを有しており,これらの既存の資産を用いた地域間連携の構築を模索する。なお,当初の予定にはなかったが,小千谷市は同じく新潟県内の燕市内企業との強いネットワークも有し,産業構造や製品も近い。両地域間の距離は約50km,高速道路でも直結しており,移動所要時間は1時間弱である。この二地域連携をモデルケースとして採り上げ,遠隔地域間連携の課題を抽出することを試みる。代表者は中越地震後の調査研究において小千谷市内企業や行政,同業者組合,商工会議所と常時協力関係にあり,燕市においても商工会議所におけるTSO審査委員長をつとめるなどしている中で,両地域間の連携に対する企業人からの生の声を把握している。本年度は主に,各地域へのヒアリング調査と趣旨説明,その後の成果分析の枠組みを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料収集・文献購入ほか消耗品等(\120,000):地域間連携関連文献や書籍,統計データの追加購入に充当する。 各地域ヒアリング調査旅費(\200,000):統計データ分析,企業間相関データ分析の結果を受け,連携候補となり得る地域へのヒアリングや打ち合わせ,既存の地域間連携実施状況の現地調査を行う。状況に応じて連携研究者による同席を要請する。 国内・海外学会参加(情報収集)(\260,000):地域学会年度大会,同国際会議(PRSCO)にて研究情報の収集を行う。 その他,ヒアリング先への事前資料や検討資料等の送料として\20,000を予定する。
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