小規模ながら自治体の境界を越えた地域産業間ネットワークの構築を比較的近隣の地域間で試み、ネットワークの自律、拡大、進化(深化)の可能性、そのための要因を明らかにすることを目的とした。いくつかの知見とともに、将来研究に向けた課題を示す。 [1]ハブレス・ネットワークの可能性:従来、行政主導のネットワーク化が成功した事例は極めて少数である。本研究では、アクターである企業等が自らハブの機能を発揮するハブレスモデルの可能性を模索したが、地理的距離の克服にハブの機能は欠かせないことが顕著に表れた。一方で、ネットワーク参画者からは中間機関によるハブ機能発揮への期待が表された。行政体を含む中間機関と地域産業間の密な対話の促進、いずれもがイコール・パートナーであるという自覚を堅持する仕組みを実装することが一つの解と言える。 [2]学習するネットワーク:研究期間を通じ、わずかな相対距離であってもお互いを知らないこと、ネットワークを通じた第三者の視点により自らの長短所に気付くことの有用性が示された。気付きを経て自身の長所を一層強化し、短所を克服する「自ら学習しあうネットワーク」は、ネットワークの自律化と継続に大きく寄与する。[3]高度人財の活用:特に地方においては若手人材の確保、活用が困難であり、地域の中核大学からの採用意欲は強いものの、彼らを人財として活用する困難さも現存する。産官学は長期的視点に立って連携し、若手人材育成とともに地方中小企業のレベルアップに取り組まねばならないが、短期的な成果が見えにくく、行政体にとっては活動の評価方法構築が課題である。[4]ロックイン効果:地方のコミュニティにおける強力な域内ネットワークが明らかに外部との新規関係性構築に対して障壁となる。この克服のためにも、階層が上の中間機関によるブリッジングが良好なネットワーク構築の鍵である。
|