研究課題/領域番号 |
24510227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今坂 智子 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教務職員 (90193721)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 危機管理 / 爆発物検知 / 理論計算 / 超短パルスレーザー |
研究概要 |
近年のテロ事件発生は、アメリカの同時多発テロ、ロシアの爆破テロなど枚挙に暇がない。我が国でも科学技術基本計画の科学技術政策の1 つに、”安全・安心な社会のための犯罪・テロ対策技術”の推進が掲げられ、軍用・産業用爆発物(TNT、RDX 等)、手製爆発物(TATP、HMTD 等)の同定を網羅的に行う装置の開発が求められている。そこで、本研究では、量子化学計算による理論研究と超短パルスレーザーイオン化質量分析の技術をもとに、高感度で網羅的な爆発物の同定を行うことを目的とする。 1.爆発物の励起エネルギーとイオン化エネルギーの計算・・TNT, RDX, HMTDなどの爆発物や有機化合物について、まず基底状態の最適化構造や振動数を密度汎関数法で求め、多配置性を導入した時間依存法を採用して、(0,0) 電子遷移エネルギーの励起エネルギーを求めた。次に1 電子を放出する際に必要なエネルギー、すなわちイオン化エネルギーを決定し、試料分子をイオン化するために用いるレーザー波長を予測した。 2.超短パルスレーザーを用いる質量分析・・爆破物を測定するための予備段階としていくつかの有機化合物の質量分析を行った。超短パルスレーザーのパルス幅が短いほど分子イオンピークが大きくなり、より高感度な測定が可能となる。そこで、広い周波数領域でイオン化できる化合物を理論計算により探索するため、いくつかの有機化合物の励起エネルギー、イオン化エネルギーおよび自己相関波形を求めた。実測により、1~3fs程度の超短パルスを測定できる可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
爆発物の励起エネルギーとイオン化エネルギーの理論計算による予測については、量子化学計算プログラム(Gaussian)を採用して、予備計算にワークステーション(設備備品)、次に九州大学情報基盤研究開発センターのスーパーコンピューターに接続して当初の予定通りに、密度汎関数レベルでの基底状態、励起状態、イオン分子のエネルギーを求めることができ、試料分子をイオン化するために用いるレーザー波長を予測した。 超短パルスレーザーを用いるガスクロマトグラフ/多光子イオン化質量分析については、連携研究者や研究協力者が開発中の超短パルスレーザーを光源とする装置を用いた測定を行った。よりパルス幅の短いレーザーの測定による分子イオンピークの増大を目指して、広い周波数領域でイオン化できる化合物を探索するため、当初の予定の爆発物の測定に先立ち、いくつかの有機化合物に関して、励起エネルギー、イオン化エネルギーを理論的に計算し、パルス幅を決めるための自己相関波形は理論と実測の両方から求めた。
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今後の研究の推進方策 |
爆発物の励起エネルギーやイオン化エネルギーに関する計算については、当初の予定通りに進めていく予定である。また、爆発物の異性体を量子化学計算によって求め、それをもとに分子統計熱力学的計算を行う。超短パルスレーザーを用いる質量分析の測定については、いくつかの爆発物で行う予定である。また、引き続きパルス幅測定に関する研究も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
費目別収支状況等「次年度使用額(B-A)」が「0」でない(197,000円)理由としては、設備備品のワークステーションのメーカーによる価格の改定や、外国語論文校閲の謝金が最初に見積もられた額より少なかったことなどが揚げられる。翌年度分の使用計画としては、当初予定していたものに加え、国際会議や国内の学会へのより多くの参加を加える予定である。また、次年度に予定していた計算ソフトやグラフソフト等は今年度に購入したので、実験用品やデータ処理、成果発表、アウトリーチ活動などをより充実させる費用に充てたい。
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