研究概要 |
1.爆発物の励起エネルギーとイオン化エネルギーの量子化学計算による予測・・爆発物TNT, RDX, HMTD, PETN, HMX, TATPに関して、TD-DFT法により第1~40励起状態までを求め、振動子強度と垂直吸収エネルギーを0.333 eVの半値半幅を持った一連のガウスピークに適合させて和をとりUV-Visスペクトルを求めた。すでに求めたイオン化エネルギーと合わせて、余剰エネルギーや吸収ピークの大きさも考慮して効率の良いイオン化が期待できるレーザー波長を予測することができた。また、精度向上と比較のため、diffuse関数も含めたさらに大きな基底関数(aug-cc-pVTZ)で同様の計算をTATPに対して行った。また、爆発物と同様にテロに利用される神経ガスであるサリン、ソマン、VX、タブン、マスタードガスとその合成副産物や代謝物等15種類の化合物についてもB3LYP/cc-pVDZ, B3LYP/cc-pVTZ, wB97XD/cc-pVTZ(wB97XDは長距離相互作用も考慮した方法)でUV-Visスペクトルの予測を行い、1色か2色か、1光子か2光子か、共鳴か非共鳴かなどの効率の良いイオン化についての知見を得た。 2.超短パルスレーザーを用いる質量分析・・TATP、HMTD、TNT、RDX、PETN等の爆発物をガスクロマトグラフ/レーザーイオン化質量分析計により分析した。超短パルスレーザーの波長を267, 241, 219 nmに変化させて測定したところ、TATPとHMTDは2光子エネルギーがイオン化エネルギー以上になると分子イオンが観測された。また、TNTは1光子エネルギーが共鳴励起と一致するところで分子イオンが増強された。一方、RDXやPETNは分子イオンが観測されず、フラグメント信号も小さかった。これらは理論から予測される結果とよく一致した。
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