研究課題/領域番号 |
24510228
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松井 岳巳 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50404934)
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研究分担者 |
橋爪 絢子 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (70634327)
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キーワード | ストレス評価 |
研究概要 |
主となる研究内容は以下の2点に集約される。 ①小型レーダーを用いた新しいストレス評価システムの開発 ストレスに伴う自律神経の活性や呼吸数の変化を非接触で計測可能なシステムを構築するために、椅子の背もたれの後ろに設置した小型レーダーを用いて心拍数変動指標を計測する。これにより、ストレス負荷による生化学的指標である唾液中αアミラーゼ濃度の変化を、生理学的指標から推定することが可能になった。さらに、多変量解析を行うことにより、ストレス負荷前後の唾液中αアミラーゼ濃度の変化を、生理学的指標である非接触で測定した心拍数変動指標と呼吸数の変化から推定できた。これらの生理学的指標はいすに座るだけで、被検者に負担をかけることなく継続して測定可能なので、ストレスの客観的評価を行う上で、極めて有益だと考えられ、今後の展開が期待される。 ②小型レーダーを用いた「うつ傾向」評価システムの開発 ストレス指標のひとつである唾液中αアミラーゼ濃度の変化の推定に加えて、小型レーダーを用いて自律神経の活性を非接触で計測可能なシステムを用いて、うつの簡易診断を行うシステムを構築する。うつ病患者の多くは、自律神経失調の傾向があり、この自律神経失調傾向を客観的に評価するシステムを構築できれば、新たなうつ診断が可能になる。リラックスにともなう自律神経活性の変化を誘導するために、小型レーダーを背もたれ背面に装置したイスに腰掛けた被検者にリラックス映像と映像に同期した音を視聴させ、視聴前後の自律神経活性の変化を測定する。うつ患者の交感神経活性と副交感神経活性が、健常者と異なる挙動を示している。イスに座ってリラックス映像を視聴するだけで「うつ傾向」の評価が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
椅子の背もたれの後ろに設置した小型レーダーを用いて心拍数変動指標を計測することにより、ストレスに伴う自律神経の活性や呼吸数の変化を非接触で計測可能なシステムを構築した。ストレス負荷による生化学的指標である唾液中αアミラーゼ濃度の変化を、生理学的指標から推定する方法を開発した。青年期から中年期までの様々な年齢の男女を対象として、ストレス刺激としての不快音負荷前後の唾液中αアミラーゼ濃度の変化と 心拍数変動指標、およぶ呼吸数の変化を測定した。αアミラーゼ濃度はストレスホルモンである血液中のノルエピネフィリン濃度と強く相関することが知られており、ストレス反応が起こった場合に濃度変化の生起が早い。また血液と比較して唾液の採取は容易で、アミラーゼモニター等の計測機器を用いることで容易に唾液中αアミラーゼ濃度の計測が可能である。多変量解析を行うことにより、ストレス負荷前後の唾液中αアミラーゼ濃度の変化を、生理学的指標である非接触で測定した心拍数変動指標と呼吸数の変化から推定することが可能になった。これらの生理学的指標はいすに座るだけで、被検者に負担をかけることなく継続して測定可能なので、ストレスの客観的評価を行う上で、極めて有益だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
小型レーダーを用いて自律神経の活性を非接触で計測可能なシステムを用いて、うつの簡易診断を行うシステムを構築する。うつ病患者の多くは、自律神経失調の傾向があり、この自律神経失調傾向を客観的に評価するシステムを構築できれば、新たなうつ診断が可能になる。現在のうつ診断は主として精神科医による問診にたよっている。このため、精神科医と患者双方の主観が介在する余地があり、精神医学の知識があれば、うつを装うことも、あるいは、うつを隠すことも可能になる。うつからの回復を客観的に診断することが困難なことから、うつをリストラの口実に使う企業さえ存在する。リラックスにともなう自律神経活性の変化を誘導するために、小型レーダーを背もたれ背面に装置したイスに腰掛けた被検者にリラックス映像と映像に同期した音を視聴させ、視聴前後の自律神経活性の変化を測定する。健常者であれば、視聴後に交感神経活性が減衰し、交感神経活性が亢進することが予想される。一方、うつ患者においては、交感神経活性と副交感神経活性が、これと異なる挙動を示すことが予想される。システムの試験運用において、これを裏付ける結果が得られつつある。本システムは、イスに座ってリラックス映像を視聴するだけで、うつの客観診断を行える可能性があり、体に何も装着しないので、被検者にとってはリビングのイスでテレビを見ているのとなんら変わりはない。システムの信頼性向上とデータの蓄積に務める予定である。
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