研究実績の概要 |
「ストレスが測れる椅子」を試作した。小型マイクロ波レーダーを内蔵したアンテナボックス・ハイパスフィルター・AD変換機・PCから構成されるシステムを,背もたれがメッシュ状の椅子に裏側から備え付けたものである。非接触バイタルサイン測定器であるマイクロ波レーダーは最大出力10mW,24GHzの安定したマイクロ波を発生させる。アンテナボックスには送・受信用の4重極の平面アンテナを収納し,背もたれの裏側,背部左側第4肋間狭付近に設置し,被験者の心臓の動きによって変調されたレーダーのアナログ反射信号をPCで記録する。このシステムを用いて呼吸数およびストレスに関連する生理学的指標である心拍数変動指数(HRV)から,椅子に座っただけで客観的かつ非接触なモニターを可能とした。 この「ストレスが測れる椅子」を用い,バイオフィードバックシステムを構築し,リラックス誘導とリラックス状態の評価を同時に行えるようにした。また臨床を応用を目指し,共同研究を行っている精神科医と共に改良を重ねている。25年度には様々な年齢の健康な男女を対象として,不快な音を聞くことによるストレス擬似状態の中におけるHRV,呼吸数,唾液中のαアミラーゼを測定する実験を行った,αアミラーゼ濃度はストレスホルモンである血液中のノルエビネフィリン濃度と強く相関することが知られており,ストレス反応が起こった場合に濃度ケンカの生起が早い。ストレスに関する生理学的指標である心拍等の指標と生化学的指標であるαアミラーゼを比較することにより,試作中である「ストレスが測れる椅子」の有用性を検証することができた。研究最終年である26年度は静岡済生会総合病院において、うつの診断を受けた精神科の外来患者臨床データの収集を行った。リラックス負荷時のHRVで求めた自律神経活性がうつ患者と健常者では異なっていた。この違いをもとにうつのスクリーニングが可能になると期待される。
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