研究課題/領域番号 |
24510229
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
浦川 豪 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (70379056)
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研究分担者 |
森永 速男 兵庫県立大学, 総合教育機構, 教授 (40210182)
馬場 美智子 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (40360383)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 危機管理 / 地理空間情報 / GIS / シームレス |
研究概要 |
東日本大震災における災害対応業務フロー分析 東日本大震災における被災自治体の家屋被害認定調査、り災証明発給の業務フローを調査した。被災自治体である福島県相馬市を事例として調査した。被災者の生活再建を支援するためのデータベース構築のためには、家屋被害認定調査、り災証明発給の際の情報技術及び地理空間情報の活用が必要不可欠となる。本災害では津波ハザードによる被害が甚大であり、家屋が流出したエリアは見なし全壊とし、り災証明発給は被災者の申請に基づき、現地調査、調査結果のデータベース化、り災証明発給、初期の被災者の台帳構築が行われた。特に、相馬市では、情報技術及び地理空間情報を上手く活用し、上記の業務及びその後の復旧、復興に関する業務を実施した。 相馬市では、平常時からの業務効率化推進のために地理空間情報の整備を進め、家屋課税台帳をポリゴンデータおよびポイントデータとして整備していた。また、家屋課税台帳の地番表記情報に基づき住所コードを付与し、住民基本台帳と住所コードで連携できる仕組みを確立していた。つまり,り災証明発給の際に必要な家屋所有者、家屋居住者の情報が約70%結びつく状況であった。2011年4月12日に開始したり災証明発給では、マイクロソフトアクセスで独自開発したり災証明発給アプリケーションを利用した。また、テーブル結合不可能な約30%は、専門家チームの遠隔支援により開発されたGISアプリケーションを利用し、被災した市民に対し迅速なサービスを展開した。 平常時と災害時がシームレスに連携した情報システム基本設計では、質の高い被災者支援のデータベース構築のため必要に応じて基幹データベースと連携できること、被災状況、災害対応業務の進捗状況等を共有するために迅速に主題図を作成できること、そして様々な災害対応業務が並行展開されることを考慮し、全庁的に利用できることを考慮した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、被災者の早期復興へ向けて災害対応業務を効果的に遂行するための日本全国の地理空間情報を活用した標準的な情報処理手法を確立し、来るべき災害に備え、平常時から自治体が所持すべき情報処理の標準的な仕組みを提案することを目的としている。つまり、災害対応業務を効率的に遂行でき、かつ被災者の早期生活再建を支援するための情報処理面の課題を整理し、日本全国の標準モデルを確立することとなる。特に被災現場で役立つ情報システムは、「普段から利用しているものでなければ災害時に利用できない。」と言われる。研究初年度に福島県相馬市の具体的な事例を調査することによって、日本全国の標準的な仕組みとして家屋課税台帳や住民基本台帳といった基幹データベースと家屋被害認定調査結果等の新しいデータベースを連携させ、り災証明発給結果、制度面の変更等によって結果が更新されることを想定したデータベースが必要であることが分かった。また、基幹データベースは平常時、機密性の高いデータベースとしてセキュリティ面で守られている。必要に応じて連携できる仕組みが求められる。また、相馬市で実現していたユニークIDによるテーブル結合は、多くの自治体では整備困難な状況であり、地理空間情報の位相関係を利用し、申請の際に対話式で異なるデータベースの情報を絞り込み、結合させる仕組みが有効となる。この仕組みは平常時においても、ユニークIDで結びつかないデータベースを検索、絞り込み、連携できる仕組みとして利用できることとなる。概ね研究計画で実施する研究内容を満たすことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災における復興プロセスは長期間に渡る。本研究でフィールドとした福島県相馬市を継続的に調査する。相馬市は約35,000人の人口の小規模都市であり、本研究の実証フィールドとして、人口約200,000人の中核都市と言える京都府宇治市、人口約1,000,000人の政令指定都市の北九州市をフィールドとする。京都府宇治市は2012年8月14日京都府南部豪雨災害で被災し、地理空間情報を利用した災害対応を実施した自治体である。地理空間情報を核とした空間的位相関係を利用した情報システムが、上記の基幹データベースを連携できる唯一の解決法となる。つまり、地理的な位相関係を利用した標準的な情報処理手法を実装することとなる。基幹データベースの所持するデータの型を考慮し、平常時に管理している基幹データベースが新しい変更無しで、平常業務の効率化、高度化、シームレスに連携可能なデータベースと情報処理の仕組みを確立する。また、日本全国の自治体が利用可能なアプリケーションのプロトタイプを開発する。その際、検証フィールドとして、政令指定都市の北九州市とその周辺自治体を対象とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究推進にあたり、その多くは現地調査、フィールドでの実践的検証のために利用する。また、GISを基盤としたアプリケーションのプロトタイプを開発のために必要なソフトウエア、ハードウエアを整備する。現地調査のために必要な機材等についても整備し、研究を進める。必要に応じてデータ入力等の研究補助等、外的資源、技術の利用も考慮している。
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