研究課題/領域番号 |
24510229
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
浦川 豪 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (70379056)
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研究分担者 |
森永 速男 兵庫県立大学, 総合教育機構, 教授 (40210182)
馬場 美智子 兵庫県立大学, 総合教育機構, 准教授 (40360383)
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キーワード | 防災情報システム / 災害対応 / GIS / 地理空間情報 / 平常時 |
研究概要 |
災害対応業務と情報技術、特に地理空間情報の実践的活用事例を調査した。対象フィールドは、東日本大震災の福島県相馬市に加え、2012年8月14日京都府南部豪雨災害で被災した京都府宇治市とした。福島県相馬市は、建築基準法第39条に基づき指定した災害危険区域指定、高台移転最適場所の意思決定、みなし仮設住宅居住者の把握等の災害対応業務に地理空間情報が活用された。さらに、原子力発電所の被災の影響を受け、市民の不安、混乱を回避する目的で、放射線物質の濃度に関する調査と調査結果の可視化と公表を行った。京都府宇治市では、座標やIDが埋め込まれたQRコード付き調査票による被害認定調査およびり災証明書集中発行に地理空間情報・GISが活用された。また、建設班の浸水エリアデータ、地区班の浸水家屋聞き取り調査結果、衛生班の消毒済み家屋のデータ等が庁内のWebGISアプリケーションで作成された。宇治市では、平常時から各課の業務で新しくデータベースを作成する際、基幹データベースの住所情報に基づくアドレスマッチングの仕組みを運用しており、災害対応の現場でも効率的な情報処理の基盤として利用された。相馬市、宇治市の災害対応における地理空間情報・GISの活用事例は、特化した防災情報システムではなく、平常時の基礎自治体業務で利活用されている仕組みが災害時に適用・応用された成功事例である。本年度はさらに、減災のための平常時と災害時がシームレスに連携可能な地理空間情報処理手法を実装するフィールドとして政令指定都市の北九州市と連携した取り組みを実施した。北九州市では、1.組織横断的情報システムを企画、導入、運用する、2.周辺自治体と連携したGISリージョナルコミュニティ形成と広域情報共有ポータルサイトを構築する、3.時代の潮流の技術、クラウドコンピューティング技術を活用した新しい地域創造を目指した取り組みを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、災害発生後からの災害対策本部での情報集約、被災者の早期復興へ向けて災害対応業務を効果的に遂行するための日本全国の地理空間情報を活用した標準的な情報処理手法を確立することを目的としている。地震災害及び局地的大雨による被害を受けた自治体での地理空間情報及びGISの活用事例、そしてその仕組み(情報処理基盤、情報処理プロセス)を調査し、主要な災害対応業務とその進め方、情報処理面の必要要件を整理することができた。具体的には、1.迅速に主題図を作成できること、2.必要に応じて基幹データベースと連携できること、3.全庁的に利用できること、が災害発生後に必要となる要件であり、平常時の業務で利用されているシームレスな連携を可能にする仕組みが必要である。これらの要件を満たす仕組みを設計、開発し、平常時の全庁的な仕組みを構築するフィールドとして福岡県北九州市の協力を得、実践的なフィージビリティースタディー、実装へ展開している。福岡県北九州市は約100万人の人口を有する政令指定都市であり、基礎自治体としての規模も大きい。本研究で設計した減災のための平常時と災害時がシームレスに連携可能な地理空間情報処理手法が全国の自治体の標準的な仕組みとして位置づけるためにも、北九州市での実践的研究は重要である。組織横断的、全庁型の情報システムの導入、運用する小規模な周辺自治体と連携したGISリージョナルコミュニティ形成と広域情報共有ポータルサイトを構築、既に導入済みであったプライベートクラウドを利用した住民参画の枠組み等、研究計画の研究内容以上の内容に展開している。
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今後の研究の推進方策 |
人口約1,000,000人の政令指定都市である北九州市をフィールドとし、本研究で提案している減災のための平常時と災害時がシームレスに連携可能な地理空間情報処理の仕組みを実装する。さらに、複数自治体が同時被災する広域災害を想定し、人口10万以下の周辺自治体と連携し共通の情報処理基盤を実装した広域的なデータ共有の仕組みづくりを実現する。新たな取り組みとして、クラウドコンピューティングを利用したGov2.0の実現を検討する。Gov2.0では、本研究で実装した技術を利用して作成、更新される平常時から基礎自治体の業務データの一部を産業界、市民と共有し、率先的な地域への参画を促進するプラットフォームを構築することを目指すものである。 研究推進にあたり、その多くは現地調査、フィールドでの実装等実践的研究のために利用する。また、GISを基盤としたプリケーション開発、ネットワーク技術利用のために必要なソフトウエア、ハードウエア、ネットワーク利用権限等を整備する。必要に応じてデータ入力等の研究補助等、外的資源、技術の利用も考慮している。
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