研究課題/領域番号 |
24510231
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏典 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20426258)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 車群追従走行 / パーティクルフィルタ / アンセンティッドカルマンフィルタ / 動的推定 |
研究概要 |
本研究の目的は,「車群の安全を見守る車群管制の実現」を念頭におき,車群を構成するすべての車両の速度,車間距離という車両状態量を動的に推定するための,車群走行状態フィードバック推定システムを構築することである.平成24年度は,この推定システムをカルマンフィルタをベースに再構築することを目標とした.得られた研究成果は以下の通りである. 1)ニューラルカルマンフィルタ(以下,NKFと略す)を用いて推定システムを構築し,数値計算を通じてそのパフォーマンスを検証した結果,速度の推定精度は高くばらつきも小さかったが,車間距離の推定は不安定でばらつきが多かった.NKFは,安定的な推定値を得るためのパラメータ同定が難しいことが明らかとなり,NKFに代わる手法が必要であるとの認識が得られた. 2)NKFに代わる手法として,パーティクルフィルタ(以下,PFと略す)及び,アンセンティッドカルマンフィルタ(以下,UKFと略す)を用いてシステムを構築する試みを行った.この結果,PF,UKFいずれの手法でも,本研究課題での定式化が可能であることが示された.また,簡易的なデータで数値計算を行った結果,NKFに比べて安定的な推定値が得られることを確認し,さらにその推定精度も高く安定していることが明らかとなった. 3)NKF,UKF,PFは伝統的な拡張カルマンフィルタ(以下,EKFと略す)で課題とされていた,状態方程式及び観測方程式の非線形性が失われるという問題を克服する手段として有用性が高いことが期待されているが,本研究課題でもこの特徴を確認することができた.平成25年度以降,様々な状況での車群状態の動的推定を行うためのツールをPF,UKFをベースに確立することができたことは大きな成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は,PF及びUKFの理論を理解し,プログラムコード化の入り口までを平成24年度内の実施項目と想定していた.しかしながら,連携研究者である北海道大学中辻隆教授から有益なアドバイスを頂き,計算プログラム自体を完成させることまで実施できた.また,簡易的なデータではあるが数値計算を進め,この結果,PFやUKFのパフォーマンスの高さを確認することもできた.このような理由から,当初の計画以上に進展していると自己評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,有用性の高いPFやUKFによる推定システムの定式化に成功した.この成果をベースに,平成25年度以降は以下の計画で研究を実施する予定である. 平成25年度は,まず,車両台数を3台より多い台数に拡張して推定を試みると同時に,長時間の走行に対して推定が可能かを検証する.また,特にPFによる推定の場合,データが負の値になることを避けるためデータを正規化するなどして,推定精度の向上を検討する.さらに,車群内に予期せぬインシデントが発生した場合の推定精度を検証する. 平成26年度は,十分な推定精度を得るためには何台程度の車両に計測器が搭載されているべきかを数値計算で明らかにする.同時に,その計測器搭載車両が車群内のどの位置に存在しているべきかも検討し,システムの実現化に向けた課題を整理する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初想定した以上にPFやUKFの計算負荷が高いことが理由で,数値計算用データの整備と数値計算を同時に進める必要があるとの認識に至った.また,効率的に計算結果を算出することも考え,数値計算機を更に2台程度整備する予定とし,この経費を計上する. また,平成25年度の研究成果を国際会議(ACIS2013,EASTS2013),国内会議(計測自動制御学会,自動車技術会,日本機械学会等)で発表すると同時に,論文集への投稿(計測自動制御学会)を図る.このための旅費,英文校閲費用,論文集掲載費用等を計上する.
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