本研究では、ヘッドライト、テールランプといったLED化されつつある車載光源を利用したスペクトル拡散方式を用いた可視光車車間通信・測距統合システム(可視光ブーメラン方式)の検討を行ってきた。本システムのベースとなる基本型ブーメラン方式では、前後して走行するA車、B車において、まず、A車がスペクトル拡散方式(SS方式)のPN信号をB車に向けて送出する。B車はそのPN信号にB車の車両情報を乗算するSS変調を行い、A車に向けて送り返す。A車は自車の有するPN信号を用いてSS復調することでB車の情報を得ると同時に、SSレーダと同様な原理でPN信号の往復時間から二車両間の車間距離を測定する。可視光ブーメラン方式では、前方B車→後方A車はLEDテールランプを光源とする可視光通信を行うことにした。後方A車→前方B車の伝送方式として、初年度にはLEDヘッドライトの利用を、2年目には車載レーザレーダの利用を考え、計算機シミュレーションでそれぞれの可能性を検討してきた。 最終年度では、まず、後方A車→前方B車の伝送方式としてLEDヘッドライト方式が良いのか車載レーザレーダ方式が良いのかを比較検討した。その結果、レーザレーダでの測距結果とブーメラン方式での測距結果が相互に補完できる点や昼間でのヘッドライト点灯が不要な点などから車載レーザレーダ方式の方が優れていると判断した。 次に、車載レーザレーダ方式の双方向通信化を図った。本方式は、車載レーザレーダ方式で後方A車が前方B車との車車間通信を行う際に、B車指定のタイムホッピングパターン(THP)情報を取得した後、A車では指定されたTHPでA車情報をB車に送信、B車でA車情報を復調、同期・再生することで双方向車車間通信を可能にした。シミュレーションの結果から、ある程度の干渉が加わっても、双方向車車間通信と測距が可能であることが確認された。
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