研究課題/領域番号 |
24510239
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
安室 喜弘 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (50335478)
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研究分担者 |
井村 誠孝 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50343273)
檀 寛成 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (30434822)
石垣 泰輔 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70144392)
西形 達明 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (40121892)
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キーワード | 災害イメージ / 環境モデリング / 災害シミュレーション |
研究概要 |
今年度は,実在の屋外環境の3次元形状の実計測にもとづいて地物モデルを生成し,物理的な浸水シミュレーションを行う手法の開発に取り組んだ.計画に沿って,次の2点について,それぞれ成果が得られた. (i)地物のモデル化手法:地上用レーザスキャナを効率的に運用するために,サーバ・クライアントモデルにもとづいた広域のレーザスキャン計画システムを構築し,レーザスキャナで計測を遂行するために必要な,最小・最適視点配置を算出する手法を開発した.比較的小さな規模の地物や狭小部における形状計測については,小型のRGB-Dカメラを利用し,可搬型システムにより屋内や小型オブジェクトの形状スキャンとポリゴンモデルの生成が可能であることを確認した.また,Strucrure-from-Motion の技術を応用し,カメラ映像から得られる画像群によって駅構内など構造をモデリングし,その利用可能性を示した. (ii) 浸水シミュレーション手法:本研究にて積極的に採用している粒子法による浸水のシミュレーションにおいて,水と干渉するオブジェクトの実測データからのモデル化が重要な事前プロセスの実装を行った.まず,CPUでの実行が可能な粒子流体シミュレーションのプラットフォームを構築した.次に,レーザスキャナによる3次元点群形状データをボリゴンに変換した形状モデルに対し,表面に固定粒子を分布させる処理を行った.乗用車や地下鉄駅の入り口などの実測モデルを用いて,この固定粒子モデルがシミュレーション用粒子との干渉計算が容易になることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,粒子法による浸水シミュレーションの枠組みにおいて,実測形状データに基づいて実在する地物のオブジェクトを生成する手法を開発することが目的であった.これは,様々な規模の地物の形状計測と,得られた形状データを粒子法による物理的な浸水挙動シミュレーションを実施する手法の開発が大きな課題となる.従来の屋外構造物のスキャン計画立案手法では,事前に写真測量による簡易3Dモデルに基づいていたが,その機能をサーバ・クライアントシステムとして実現し,モビリティの高いクラインと端末を使って現場でモデリング作業を行い,サーバと通信しながら立案処理を行うことでし手戻りの無いスキャン計画手法を確立した.既設の屋外レーザスキャナにより,大学構内の構造物を対象として立案と実測の実験を行い,その効果を確認した.また,小規模の構造物については,そのスケールに合わせて可搬性の高い計測システムを適用し,実測ベースの3次元形状モデルを生成することができた.前年度より進めている粒子法による流体シミュレーションを使った浸水シミュレーションに組み込むことができた.以上のことから,当初の研究計画における目標を概ね順調に達成しているものと判断する.これらの成果は次年度以降,土木情報学などの学会等で逐次報告し,論文投稿の予定である. また,当初の計画には特記していなかったが,拡張現実感(AR; augmented reality)表示による浸水状況の可視化システムの開発にも着手し,実装方法に道筋をつけることができた。情報端末を積極的に利用する方法が,今年度検討できたことも,シミュレーションの利用形態の多様性を高める上で,今後,本研究課題において,大きく寄与するものと期待される.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,前年度までの成果で得られた実環境の3次元形状計測とモデル化技術と粒子モデルによる流体シミュレーションの陽解法モジュールをベースとして,対話的な浸水被災イメージを生成し,配信する仕組みについて検討する予定である.今年度はGPU(graphical processing unit)を使った並列化処理の利用により,粒子法シミュレーション規模の拡大を図るだけでなく,場合によっては格子法による浸水状況との組合せにより,浸水被害予測の可視化技術を模索する.短期降雨予測と,地域の排水施設等の状況に基づいて得られる浸水深から,まずは格子法による浸水被害を広域に対してシミュレーションを行う.この結果を,地下構造物などの局所シミュレーションにおける境界条件として,粒子シミュレーションによる動的な流入・浸水被害の可視化を行うものである.これにより,対話的に災害予測の程度を変化せることを可能とし,さらに,もたらされる影響を即時的に可視化するシステムとする筋道を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、データ処理に時間を要したために、本年度内に予定していた論文誌への投稿2本が遅れ、その投稿予定とかかる費用を次年度に持ち越したことによる。 平成26年度は,シミュレーション技術を応用したコンテンツを作成および表現手段の開発を行う.エンドユーザ環境を想定したネットワーク端末,およびホームページ やデジタルアーカイブとしての配布が可能なコンテンツ生成に必要な,ハードウェア・ソフトウェアの購入と,コンテンツ生成における技術的な作業にかかる人件費を計上している.写実的で対話性のある災害イメージを3 次元マルチメディアコンテンツとして公開してデモンストレーションする状況を想定し,デモンストレーション用の形態性の高いタブレット型の計算機も購入予定である.これらを使用した実装および評価実験を踏まえ,その成果報告として,国際会議への参加や論文投稿を行うための諸経費を計上しており,また前年度に予定していた論文誌への投稿予定についても,別途準備を進めている.
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