研究課題/領域番号 |
24510244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
松冨 英夫 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20134083)
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研究分担者 |
原田 賢治 静岡大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40378922)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 津波 / 鉄筋コンクリート造建物 / 海岸黒松 / 被害条件 / 現地調査 / 現地試験 |
研究概要 |
岩手県久慈海岸から福島県南相馬海岸(警戒区域を除く)までの現地調査に基づいて,2011年東北地方太平洋沖地震津波において浸水した鉄筋コンクリート造建物の立地・配置,諸元(幅,奥行,高さ,主な柱の寸法),開口率,根入れ深さ,杭基礎・周囲舗装の有無,地盤の洗掘・液状化の有無,被害形態と津波浸水深に関するデータを収集し,「鉄筋コンクリート造建物の移動・転倒の要因と条件」を検討した.要因として建物の浸水深,浸水縦断面積,開口率,根入れ深さと海からの距離を取り上げ,それらの建物の移動・転倒への影響を論じた.移動・転倒条件には浸水深と建物の浸水縦断面積が重要であることを示した.また,開口部(開口率0,8,29,66%)を有する鉄筋コンクリート造建物に働く津波流体力に関する小型模型実験を実施し,静水圧や浮力,既存の水平力評価式と比較しながら,津波流体力(水平力と鉛直力)の基本特性を検討した. 2011年東北地方太平洋沖地震津波において浸水した黒松の幾何諸元(樹高,樹幹高,胸高直径),被害形態,植生密度,浸水深に関するデータを収集し(調査域は鉄筋コンクリート造建物の場合と同じ),海岸黒松の被害条件(胸高直径と浸水深,被害形態の関係)を検討した.また,岩手県の宮古市田老字向山と山田町船越浦の浜における現地試験に基づいて,「海岸黒松の根部の幾何特性(深さと幅(長軸と短軸の2方向)),樹幹と地盤を一体に考えた合成弾性係数といった力学特性や被害(倒伏,抜根,折損)条件」を検討した.被害条件については,インドネシアにおける津波減勢林の代表樹木であるCasuarinas(Sea Casuarina,Shrimp Casuarina)と比較・検討し,三者の津波減勢林としての性能の大まかな位置付けも行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「鉄筋コンクリート造建物の移動・転倒の要因と条件」に関する現地調査は予定通りに進み,建物の諸元,立地・配置,開口率,根入れ深さ,杭基礎・周囲舗装の有無,地盤の洗掘・液状化の有無,被害形態と津波浸水深に関するデータを収集し,現地調査に基づく第一近似の移動・転倒の条件を提示した. 鉄筋コンクリート造建物に働く津波流体力に関する小型模型実験は3年計画で,本年度は模型の床高と開口率を変化させた実験を行い,津波流体力の基本特性を検討しており,研究は順調に進展している. 「海岸黒松の幾何諸元と倒伏,抜根,折損の条件」に関する現地調査も予定通りに進み,浸水した黒松の幾何諸元,被害形態,植生密度,浸水深に関するデータを収集し,浸水深から氾濫流速と抗力を推定し,水平力やモーメントへの書換えを行って,海岸黒松の被害条件を検討した.ただし,当初予定の地盤の粒度データの収集は行わなかった. 「海岸黒松の根部の幾何特性,樹幹と地盤を一体に考えた合成弾性係数と倒伏,抜根,折損の条件」に関する現地試験は2年計画で,本年度は当初計画より1地点多い2地点(岩手県)で行い,海岸黒松の根部の幾何特性,合成弾性係数と倒伏,抜根,折損の条件を検討しており,研究は順調に進展している.ただし,試験地の縦断地形測量は,復旧工事で土地が改変されていたため,行わなかった.
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今後の研究の推進方策 |
「鉄筋コンクリート造建物の移動・転倒の要因と条件」および「海岸黒松の幾何諸元と倒伏,抜根,折損の条件」に関する現地調査とそれらの取りまとめはすでに終えている. 今後は,次の2点の研究を並行して推進する. 「鉄筋コンクリート造建物の移動・転倒の要因と条件」については,条件を変えて小型模型実験を最終年度まで継続し,実験結果を取りまとめる.そして,すでに取りまとめを終えている現地調査結果と総合して,「鉄筋コンクリート造建物の移動・転倒条件」を提案する. 「海岸黒松の根部の幾何特性,合成弾性係数と倒伏,抜根,折損の条件」については,次年度も現地試験を1地点で行い,現地試験結果のとりまとめを行う.そして,すでに取りまとめを終えている現地調査結果と総合して,「海岸黒松の倒伏,抜根,折損の条件」を提案する. 最後に,これらの研究成果を社会へ還元する方法について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通りに使用する.具体的には,次年度も現地試験を岩手県の1地点で行う予定で,パワーショベルの借り上げ料や旅費などの現地試験費に使用する.条件を変えて模型実験を継続するため,研究補助費や模型材料費に使用する.研究成果を国内(第60回海岸工学講演会,福岡),国外(第26回津波シンポジウム,トルコ)で発表するため,旅費に使用する.論文投稿料(海岸工学論文集,60巻)と国際会議登録料(第26回津波シンポジウム)に使用する.
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