研究課題/領域番号 |
24510244
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
松冨 英夫 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20134083)
|
研究分担者 |
原田 賢治 静岡大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40378922)
|
キーワード | 津波 / RC造建物 / 海岸黒松 / 被害条件 / 現地調査 / 現地試験 |
研究概要 |
建物の高さ,開口率,床高と入射津波条件をパラメータとした系統的な模型実験を行い,開口部を有するRC造建物に対する津波の水平力と鉛直力の低減特性を中心に検討し,次の結果を得た.①開口率が増加するにつれて,水平力は直線的に低減する.②津波氾濫流が建物を越流するようになると,入射氾濫水深の増加率の割に水平力の増加率は鈍る.③津波氾濫流が建物を越流する場合の鉛直力は浮力や揚圧力,建物底面における下向きの揚力だけでなく,建物上面における上向きの揚力も働き,越流水深が少し増加するだけで,上向きの鉛直力は大きく増加する.④開口部がない場合,鉛直力は上向きとなる.⑤開口部がある場合,鉛直力は下向きとなり,開口率が増加するにつれて鉛直力の絶対値は小さくなる.⑥「骨組のみ」の場合,流入水の溜まるところがなく,小さな下向きの力に止まる. 入射津波条件を用いた開口部を有するRC造建物の前面浸水深の簡易推定法を提示し,現地調査結果と総合して,開口部を有するRC造建物の移動・転倒条件も提案した. 岩手県普代村で現地試験を実施し,海岸黒松の倒伏,抜根,折損に関する現地試験データを蓄積した.これまでに得られた全試験データを1)樹幹へ載荷した水平力の地面からの作用高さ,2)生存・枯死,3)生育場所の3観点から検討し,次の結果を得た.①各種被害形態に至る限界水平力はその作用高さに依存し,作用高さが低いほど被害に至る限界水平力は大きい.この傾向は片持梁のたわみ理論で説明できる.②各種被害形態に至る限界モーメントのまとまりは限界水平力のものよりよい.③津波被災後2.5年以内の試験であったためか,生存木・枯死木の被害条件に大差は認められなかった.④生育場所の違いによる被害条件にも大差は認められなかった.⑤海岸黒松の実用的な被害条件式を提案した.ほとんどの試験データが提案式で計算された値の±5割の中に包含された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「RC造建物の移動・転倒の要因と条件」に関する現地調査はすでに終え,現地調査に基づく第一近似の移動・転倒の条件を提示し,その適用性のチェックを行った. 「RC造建物の移動・転倒の要因と条件」に関する模型実験は予定通りに進み,本年度は建物の高さ,開口率,床高と入射津波条件をパラメータとした系統的な模型実験を行い,開口部を有するRC造建物に対する津波の水平力と鉛直力の低減特性を中心に検討を行い,研究は順調に進展している. 「海岸黒松の幾何諸元と倒伏,抜根,折損の条件」に関する現地調査もすでに終え,海岸黒松の被害条件を検討した. 「海岸黒松の幾何諸元と倒伏,抜根,折損の条件」に関する現地試験も予定通りに進み,本年度はこれまでに得られた全試験データを1)樹幹へ載荷した水平力の地面からの作用高さ,2)生存・枯死,3)生育(現地試験)場所の3観点から検討し,海岸黒松の実用的な被害条件式を提案すると共に,根部の幾何諸元特性や合成弾性係数を再検討するなど,研究は順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
「RC造建物の移動・転倒の要因と条件」および「海岸黒松の幾何諸元と倒伏,抜根,折損の条件」に関する現地調査とそれらの取りまとめはすでに終えている. 今後は,次の2点の研究を並行して推進する. 「RC造建物の移動・転倒の要因と条件」については,条件を変えて小型模型実験を継続し,実験結果を取りまとめる.そして,すでに取りまとめを終えている現地調査結果と総合して,「鉄筋コンクリート造建物の移動・転倒条件」を提案する. 「海岸黒松の根部の幾何特性,合成弾性係数と倒伏,抜根,折損の条件」については,静岡県浜松市で現地試験ができることになったので,現地試験後,これまでの現地試験結果のとりまとめを行う.そして,すでに取りまとめを終えている現地調査結果と総合して,「海岸黒松の被害条件式」を提案する. 最後に,これら2つの総合した研究成果を社会へ還元する方法について検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品を当初予定より安価に調達できたためです. RC造建物への津波流体力実験を実施するための消耗品を購入するのに使用させていただきます.
|