最終年度(平成28年度)には,北海道の樽前山の寛文七年(1667年),元文四年(1739年),明治七年(1874年),明治十六年(1883年)の噴火について史料を収集,整理,解析して平成29年3月に『樽前山噴火史料集』津久井編,79pを刊行した.1667年噴火,1739年噴火時には樽前山近傍に観察者がいなかったことから,200㎞以上離れた青森県,岩手県の噴煙観察,地震記録を基に推移と継続期間について整理した.1874年噴火,1883年噴火は開拓使官員・職員が多くの地点から観測した結果が『開拓使日誌』に公文書として記録され北海道立文書館に所蔵されており,多くの新史料を採録して高分解能で噴火の状況・推移と行政対応を復元した. 本課題では平成24年度から28年度にわたり,災害の予知・減災に資するべく,江戸時代の史料などから国内の火山の噴火履歴・推移を地震活動との関連を含め,高い分解能で理解することを目的として遂行した.研究期間内の成果として, 1. 津久井雅志編(2013)有珠山噴火史料集.140p.2. 津久井雅志編(2014)北海道駒ヶ岳噴火史料集.103p.3. 津久井雅志編(2016)渡島大島噴火史料集.74p.4. 津久井雅志編(2017)樽前山噴火史料集.79p.5. 塚原えりか・津久井雅志・古川 登 ・小林哲夫(2015)1783年浅間山天明噴火で噴出した「火山硫黄毛」.火山 60,483-486.を刊行・公表した. 噴火史料集では,江戸時代を中心に個々の史料の成り立ちを示して信頼性を確保するとともに,所蔵者を明らかにして検証可能な形で,既往の研究に対して高い分解能で噴火(と関連する可能性のある地震の)推移を明らかにし,また突発的な地変に当時の行政担当者がとった対応を明らかにした.今課題を通して,理学的な研究と防災対応の基礎資料になる成果を得て公表することができた.
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