研究課題
本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震で誘発された活断層を事例に,内陸地震の前後に断層から放出された揮発性物質の主成分や希ガス同位体組成の違いを世界で初めて明らかにする。また,地形・地質学的手法や地球物理学的手法等では発見が困難であった低活動性の断層や未成熟の断層等といった変動地形が明瞭でない活断層を認定するため,上記の知見を踏まえつつ,地下水中の溶存ガスの希ガス同位体組成を指標とした新たな活断層調査法を実用化することを目指している。平成25年度は,2011年3月11日以降,地震活動が活発化した横手盆地東縁断層周辺において,遊離ガスまたは地下水中の溶存ガスの採取を行い,主成分ガスおよびヘリウム,ネオンの同位体組成の測定を実施した。また,地下水中の酸素・水素同位体の測定も併せて実施した。その結果,断層周辺には第四紀火山等のマントル起源ヘリウムの供給系は存在していないにも係らず,島弧の火山ガスに比べて高いヘリウム同位体比(3He/4He比)を示すことが明らかになった。これらのことは東北地方の脊梁山地の形成に寄与する逆断層がマントル起源ヘリウムの供給系になっている可能性を示唆する。
2: おおむね順調に進展している
2011年東北地方太平洋沖地震以降に地震活動が活発化した活断層周辺において地震前後のデータを得ることができた。
今後は,福島県会津~山形県置賜地方の群発地震域といった3月11日以降に地震活動が活発化した地域について試料の採取・分析を行い,データの蓄積を図る。また,ヘリウム同位体比の時間・空間分野に加えて地球物理学的データ(地震波速度構造,比抵抗構造等)を考慮しつつ,断層周辺におけるマントル起源ヘリウムの輸送プロセスのモデル化を試みる。
ヘリウム同位体等の分析数量が当初計画よりも少なくなったので当該年度について予定額と異なった。分析に必要な銅ガスケット,チタンゲッター管等の購入費として充当する。
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