研究課題/領域番号 |
24510252
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米澤 千夏 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60404844)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 人工衛星 / 航空機 / 画像 / 被災農地 / 地理情報システム / 空間解析 / 仙台平野 |
研究概要 |
平成23年3月11日に発生した東日本大震災による津波で被害をうけた農地を観測した人工衛星リモートセンシングデータの解析をおこない、以下の結果を得た。 1. 圃場単位での詳細な作付状況抽出手法の開発 津波の被害が大きかった宮城県亘理町を対象とし、震災前のALOS/AVNIR-2データの4バンドにNDVIを加えた5バンドに教師なし分類を適用し、植生域を抽出した。抽出した植生域で、平成24年8月21日に取得されたASTER/VNIRデータをマスク処理し、農地以外の植生域を除去した。現地調査の結果をもとに、耕作地として21圃場、非耕作地49圃場をトレーニングエリアに設定した。また、その他のエリアを目視判読により設定した。最尤法による教師付き分類により、耕作地、非耕作地、その他の3クラスに分類した。GIS上で分類結果と圃場ポリゴンを重ね合わせることで、各圃場ごとで最も頻度の高いクラスを算出し、その圃場のクラスとした。教師付き分類の結果に圃場ポリゴンを重ね合わせ、クラス分けすることで、教師付き分類で複数クラスを含む圃場を一つのクラスに関連づけた。その結果、生育が遅い耕作地での誤分類が減少した。 2. 平成24年度の作付状況の抽出 植生指標を用いて、仙台平野南部の平成24年度の作付状況を圃場単位で抽出した。圃場ポリゴンデータをASTER/VNIRから算出した植生指標の分布に重ね合わせ耕作地と非耕作地に区分した。その結果、津波による浸水地域に相当している地域でも、内陸側では植生が認められ、現地調査によって検証したところ作付がおこなわれている圃場が分布していることがわかった。一方沿岸部には作付が行われていない農地がひろがっていることを確認した。これらは被災農地における除塩作業が内陸側からおこなわれていることと一致している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学センサであるASTER/VNIRデータの解析により、圃場単位での詳細な作付状況抽出手法の開発と平成24年度の作付状況の抽出をおこなった。対象地域は平地であり、圃場単位での解析をおこなうために圃場ポリゴンの重ね合わせが容易にできることを確認した。解析においては誤分類が生じることが問題となったが、これを低減する手法を開発した。このことは平成25年度以降の復旧状態を継続してモニタリングしていく上で重要である。また、本研究の目的のひとつは、津波被害の大きかった仙台平野の農地を対象として圃場単位での復旧の状況を調べることであり、平成24年度においてはこれをおおむね達成することができた。また、平成20年に発生した岩手・宮城内陸地震による被害状況を観測したリモートセンシングデータの解析をおこなうことによって、観測データの東日本大震災被災農地への適用可能性をしらべた。 結果については学会および所属機関における東日本大震災復興プロジェクトである「食・農・村の復興支援プロジェクト」の活動報告会で発表した。 さらに、平成25年度以降の研究実施のために、宇宙航空研究開発機構による時期地球観測衛星ALOS-2(だいち2号)第4回研究公募、およびDLR (ドイツ航空宇宙局)によるレーダ衛星TerraSAR-X データ利用研究公募に応募・採択され、観測データが無償提供されることとなった。また、情報通信研究機構による高分解能航空機搭載映像レーダを用いた共同研究提案公募に応募し、研究提案としての採択には至らなかったものの、観測データを研究利用できることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降、以下を実施する。結果は学会のほか、東日本大震災からの復興に関するシンポジウムなどで報告する。 ◇ ASTER/ VNIRによる圃場単位での作付状況の経年変化の抽出:平成25、26年度もひきつづきASTER/ VNIRによって観測されたデータの解析をおこない、年々変化する津波被災地域における作付状況を圃場単位で抽出する。現地調査をおこない、衛星画像から得られた作付状況と比較・検証する。平成24年度に開発した解析手法についての検証をすすめ、平成25年度以降の解析に適用していく。 ◇ 震災直後の被害状況の把握:平成25年度より、被災直後の圃場単位での被害程度の判別をおこなうために、被災直後に繰り返し観測されたレーダ衛星画像の解析をおこなう。レーダ衛星画像は雲があっても地表面を観測できることから、被災直後の被害状況の時系列変化を光学センサよりも短い時間間隔で抽出できる。無償で入手できる権利を得ている日本のALOS(だいち)に搭載されたPALSAR、およびドイツのレーダ衛星TerraSAR-Xのデータ解析をおこなう。TerraSAR-XはPALSARよりも波長が短いX-バンドを採用しており地上分解能も高い。 ◇ ALOS-2(だいち2号)データによる作付状況の抽出手法の開発:平成25年度にはALOS-2(だいち2号)の打ち上げが予定されている。観測されたデータを本研究に利用するための検討をすすめる。 ◇ 航空機搭載映像レーダの取得画像による作付状況の抽出:平成25、26年度には高分解能航空機搭載映像レーダ”Pi-SAR2”が観測を行う予定である。情報通信研究機構の運用によるX-バンド観測センサによって取得されたデータの利用は可能であり、また宇宙航空研究開発機構の運用によるL-バンド観測センサにおいても研究公募中であり応募を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
主要な使用予定用途は以下のとおりである。 ◇ リモートセンシング・GISソフトウェア維持管理:リモートセンシングソフトウェアおよびGISソフトウェアは研究の実施において必須である。研究を効率的にすすめるにはコマーシャル・ソフトウェアを使用することになる。すでに保有しているソフトウェアを活用するが、利用にあたってはバージョンアップへの対応やFAQを活用するための維持管理費用(保守費)が年単位で生じる。 ◇ データ解析・現地調査用機器整備:解析に用いるコンピュータや現地調査用の情報機器は年々性能があがっており、またデータ量も年々増大している。本研究では最新の人工衛星や航空機による観測データを活用することを予定している。これらのデータを解析処理するための情報機器の整備をおこなう。効率的に現地調査をおこなうために、GPSを含めたGNSS(全地球型測位システム)対応機器も整備していく。 ◇ 衛星データ:リモートセンシングデータは有償のものが多い。本研究においてはできるだけ研究目的で無償提供されるデータを入手・活用するが、研究の進展のために有用な高分解能衛星などのデータがあれば有償入手する。 ◇ 旅費・学会参加費および謝金:成果の公表のために学会発表をおこなう。平成25年度は国際学会への参加を2件予定している。また現地調査の実施にあたっても旅費が生じる。また、現地調査の補助、データ整備にあたってアルバイトへの謝金が生じる。
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