東日本大震災による津波被害農地を観測した航空機および人工衛星リモートセンシングデータについて以下の解析をおこなった。 1. 航空機搭載Xバンド合成開口レーダ取得画像の解析による2013年および2014年の作付状況の抽出 航空機搭載合成開口レーダシステム(Pi-SAR2)は、世界最高精度である30cmの分解能で地表面を観測することができ、圃場単位での作付状況の抽出に利用できる。Pi-SAR2はXバンドを採用しており、全偏波観測が可能である。Pi-SAR2で2013年と2014年の8月下旬に仙台市若林区の圃場をそれぞれ異なる4方向から観測したデータを解析した。航空機観測にあわせて現地調査をおこない、作付の状況を位置情報つきの写真や動画で記録した。取得データに対して、固有値解析および散乱成分への分解をおこなった。対象地域の圃場を大豆圃場と水稲圃場に区分し、2013年と2014年における作付状況の変化を抽出した。 2. 人工衛星搭載高分解能光学センサによる生育むらの抽出 作付が再開された被災農地が抱える問題点として、水稲の生育むらおよび成熟期における倒伏が挙げられる。そこで、仙台市若林区の農地を対象として、高分解能光学衛星による新規撮影をおこなった。幼穂形成期である7月上旬、出穂期に相当する7月下旬、穂揃期である8月上旬に撮影されたマルチスペクトル画像から得られる反射率からNDVI(正規化植生指標)を計算した。NDVI画像には、水稲の生育むらがはっきりとあらわれた。また、7月上旬の水稲作付圃場におけるNDVIの平均値は、移植圃場ではおよそ0.5以上であるのに対し、直播圃場では0.4以下となっている。この違いは8月上旬には小さくなるものの、依然直播圃場は移植圃場よりも小さな値を示した。解析結果は農業改良普及センターおよび現地の生産組合に提供し、衛星画像の営農管理への有効性が評価された。
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