国土の約7割が山地である日本では,多くの道路が山間部に建設されている.これらの道路には数多くの斜面が存在し,斜面災害の発生する確率が高い.しかし,限られた予算では,道路防災総点検において要対策と判断された道路斜面すべてを防災対策することは困難である.一方,過去30年間に10回実施されている道路防災総点検の結果は,基本的に本来業務のみにしか用いられていない.このため,業務終了は,死蔵されているといっても過言ではない.この死蔵されたデータを再利用することができれば,経済的かつ効果的に机上で危険な道路斜面を抽出することが可能になる. 本研究では,①統計学的な手法(拡張型数量化Ⅱ類)に加え,人工知能技術(自己組織化マップ,ファジー理論)によって,過去の災害事例と道路防災総点検の結果に基づき,斜面を特徴毎に客観的にグループ化する方法を提案した.②それぞれのグループについて,起こりうる災害との関係を明らかにした.③①と②の結果から道路の被災シナリオを推定した.そして,それに基づく防災対策の優先順位付けを行う意志決定手法を提案した.
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