研究課題/領域番号 |
24510255
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
横山 俊治 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (20325400)
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研究分担者 |
井口 隆 独立行政法人防災科学技術研究所, その他部局等, 総括主任研究員 (40360375)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 付加体 / 深層崩壊 / 尾根の裂け目 / 線状凹地 / 山上平坦面 / 前兆現象 |
研究概要 |
深層崩壊は地下深部の岩盤中に破壊面をもつ崩壊である。崩壊物は高速で移動し、その体積が106m3以上に達する場合にはしばしば河川を堰き止めて天然ダムを形成するなど、発生域のみならず下流域にまでも大きな被害を及ぼすことがある。その発生場所を 予測することは重要な課題である。付加体山地の深層崩壊は尾根頂部の破壊から始まる。この特徴に着目し、尾根に現れた変動地形と変形構造を深層崩壊の前兆現象と捉えて、その発生場所を予測する手法を開発するのが、本研究の目的である。深層崩壊の前兆現象の指標には、山上の裂け目やそれを起源とする線状凹地のほか、山向き小崖、山上平坦面、変動地質構造がある。深層崩壊の発生場所の予測手法の開発とは、これらの前兆現象の指標の検出の仕方・見方を示すことである。 1年目の今年は線状凹地・裂け目の発達している山上平坦地の中から課題解決に適したサイトを検出することを目的として、四国で7か所、近畿の1か所で現地調査を実施した。 四国山地のある事例では、尾根の頂部に裂け目を起源とする線状凹地が一条から二条発達し、凹地の幅が大きいところでは山上平坦面も広くなっている。このような山上平坦面は裂け目にそって尾根が陥没し、平坦面が形成された可能性がでてきた。 2011年豪雨で発生した紀伊半島赤谷の大規模深層崩壊では、崩壊を規制する断層と尾根の裂け目の関係が検討された。崩壊面は付加体形成同時期および付加体形成後期の断層群に規制され、移動体の内部では、斜面と平行に発達する断層群(おそらくスラスト)やユニット境界をなす序列外断層に規制されたシート状岩盤が断層にそって分離・移動をくり返しながら崩壊したことが推察された。尾根頂部の裂け目は被覆層で埋積されていたが、それと断層群は連結している可能性が高く、裂け目から浸透した地下水が破壊の引き金になったと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の第一の目的である課題解決に適した線状凹地・裂け目の発達している山上平坦面の検出に成功した。具体的には、①山上平坦面の地形的特徴から、侵食地形としての山上平坦面から変動地形としての山上平坦面を識別する手法を開発する前段階として、変動地形として生じた可能性のある山上平坦面を複数検出した。②線状凹地形成の運動像解明に、線状凹地の両側斜面の勾配の非対称性が手がかりになることがわかった。③②の一例として、同じ地質構成と地質構造をもつ連続した尾根において、線状凹地の発達している尾根では、山頂が裂けていない尾根の形態と比較して、山頂が低くなると共に平坦になっている事例を発見した。この事例は、裂け目にそってもとの尾根が前方への傾動した可能性がある。 本年度の末、四国山地では、航空レーザー測量の数値データを国交省から提供して頂くことが可能になった。それを用いた赤色立体地図や等高線地形図の作成(図化)も、科研費の予算内で作成して頂く業者もみつかった。本年度は赤色立体地図を3サイトで作成した。 四国山地では、「現地踏査による概査で尾根の裂け目の検出→航空レーザー測量の数値データを使った図化→簡易レーザー測距儀を用いた現地地形計測、地質図作成、空中写真判読」を一連の作業とする課題解決の方針が確立した。 赤谷の大規模深層崩壊では、初期的変形(尾根の裂け目)から断層にそった岩盤の緩みを経て、最終的な崩壊にいたるプロセスがみえてきた。
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今後の研究の推進方策 |
航空レーザー測量の数値データの入手が可能になり、それを用いた赤色立体地図や等高線地形図の作成(図化)が可能になった四国山地では、「現地踏査による概査で尾根の裂け目の検出→航空レーザー測量の数値データを使った図化→簡易レーザー測距儀を用いた現地地形計測、地質図作成、空中写真判読」を一連の作業として、今後研究を進めることにする。そのうえで、より大きな成果を上げるには、次年度も、課題解決に適した線状凹地・裂け目の発達している山上平坦地の検出が重要であることが改めてはっきりした。 次年度は、谷側への傾動構造のなかみである変動地質構造と、そのそとみである変動地形との構造的関係を解明し、その形成プロセスを明らかにする研究にも着手する。特に、谷側への傾動構造で生じる尾根の裂け目と、地震動による尾根の裂け目との識別を検討したい。 これらの一連の研究で、地形図読図・空中写真判読・現地踏査(現地計測)といった手法に違いによってどのような地形がどこまで検出可能か、検出精度の限界についても議論できるようになるものと期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は静岡市の赤崩の崩壊地についても調査を行なう 計画であったが、奈良県大塔町の赤谷崩壊地の調査に時間が取られ、該当地域の空中写真の判読作業が難航したことから調査に適した時期を逸してしまい調査旅費に余剰が生じた。 25年度では余剰分を赤崩の調査旅費に使用する計画である。
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