研究課題
一度発生すれば、甚大な被害を発生する深層崩壊の発生場所を、尾根の変形を指標に予測する方法を開発することが本研究の最終目的である。そこでとくに着目している尾根の変形は尾根の頂部に発達する裂け目である。本年度は2件の主要テーマを設定した。ひとつ目は、四国地方における尾根の裂け目に関する詳細調査である。初年度の平成24年度の末に運良く入手できた航空レーザー測量の数値データーから作成した航空レーザー測量図(LP図)を用いて、詳細な変動地形調査を行った。2万5千分の1地形図ではもちろんのこと空中写真判読でも把握することができない規模の裂け目の全体を、LP図の判読によって正確に把握することができるようになった。LP図で大局を把握したうえで、簡易レーザー測距儀を用いた詳細な変動地形の現場計測を行った。裂け目形成に伴って、大なり小なり、尾根が陥没していることが明らかになってきた。山上平坦面の形成に尾根の陥没が関係していることを予感させる。これは当初予測した結果である。ふたつ目は、中部地方南アルプス四万十帯の崩壊地、赤崩の滑落崖周辺および背後の斜面から尾根にかけて発達する裂け目や山向き小崖が地層の谷側への傾動に伴って発生したものかどうかの検証が目的であった。しかし、層理面の山差し構造が地質時代のものか谷側への傾動によるものかは決着がつかなかった。ただ、同じ四万十帯の付加体でありながら、四国、近畿、中部、それぞれの地域で、地質、岩盤特性、地形にかなり差異があり、そのことが、前兆現象としての初生山体変形や深層崩壊の運動様式にも違いとなって現れているように思われた。本研究の主目的からすると、今後は、尾根の裂け目が多発している四国山地に調査・研究の重点をおくのが望ましい。詳細な変動地形の解析をベースに、尾根の裂け目と山上平坦地の関係を解明し、付加体山地の深層崩壊の発生場所を予測に結びつけたい。
2: おおむね順調に進展している
まず、交渉の末、国交省四国地方整備局四国山地砂防事務所所有の航空レーザー測量の数値データーを提供して頂けることとなった。これにより、科研費の予算で航空レーザー測量図(LP図)を図化することができた。LP図を用いれば、2万5千分の1地形図はもちろんのこと空中写真判読でも把握することができない規模の裂け目(線状凹地)を正確に把握することができるようになった。これに、簡易レーザー測距儀による現地測量を組み合わせることによって、裂け目(線状凹地)の正確な分布だけでなく、裂け目形成に伴う尾根の沈降域の範囲、規模の把握が可能になり、さらには地面の回転の有無や回転の方向も議論できるようになった。LP図および簡易レーザー測距儀による現地測量の有効性と限界も明確になり、今後、精度の高い変動地形計測の手法の確立に向けて展望が開けた。調査結果としては、当初予想した尾根の裂け目に伴う尾根の陥没が現実味を帯びてきて、山上平坦面の形成に尾根の裂け目が関係していることが明らかになってきた。
今年度は本研究の最終年度である。そこで、尾根の裂け目が至るところで発生している四国山地に調査研究の重点をおく。LP図と、簡易レーザー測距儀による現地測量を最大限活用し、尾根の裂け目に伴う詳細な変動地形を記載する。それをもとに、裂け目に伴う尾根の変形様式のタイプ区分、尾根の裂け目の有無-陥没の有無-山上平坦面の関係性の解明を行い、その成果を山上平坦面の成因的分類と検出方法の確立という形でまとめる。さらに、深層崩壊の発生場所を予測する方法の確立に向けて、その方策を提案する。南海地震の発生が危惧されている今日、海岸沿いの平地の津波災害と同様に、山間地域における地震時斜面災害についても関心が高い。そのことを踏まえて、社会・国民への発進として、尾根の裂け目に関する一般書の作成に着手する。
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