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2013 年度 実施状況報告書

尾根の変形を前兆現象として、付加体山地の深層崩壊の発生場所を予測する手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24510255
研究機関高知大学

研究代表者

横山 俊治  高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (20325400)

研究分担者 井口 隆  独立行政法人防災科学技術研究所, その他部局等, その他 (40360375)
キーワード付加体 / 深層崩壊 / 尾根の裂け目 / 線状凹地 / 山上平坦面 / 前兆現象
研究概要

一度発生すれば、甚大な被害を発生する深層崩壊の発生場所を、尾根の変形を指標に予測する方法を開発することが本研究の最終目的である。そこでとくに着目している尾根の変形は尾根の頂部に発達する裂け目である。本年度は2件の主要テーマを設定した。
ひとつ目は、四国地方における尾根の裂け目に関する詳細調査である。初年度の平成24年度の末に運良く入手できた航空レーザー測量の数値データーから作成した航空レーザー測量図(LP図)を用いて、詳細な変動地形調査を行った。2万5千分の1地形図ではもちろんのこと空中写真判読でも把握することができない規模の裂け目の全体を、LP図の判読によって正確に把握することができるようになった。LP図で大局を把握したうえで、簡易レーザー測距儀を用いた詳細な変動地形の現場計測を行った。裂け目形成に伴って、大なり小なり、尾根が陥没していることが明らかになってきた。山上平坦面の形成に尾根の陥没が関係していることを予感させる。これは当初予測した結果である。
ふたつ目は、中部地方南アルプス四万十帯の崩壊地、赤崩の滑落崖周辺および背後の斜面から尾根にかけて発達する裂け目や山向き小崖が地層の谷側への傾動に伴って発生したものかどうかの検証が目的であった。しかし、層理面の山差し構造が地質時代のものか谷側への傾動によるものかは決着がつかなかった。ただ、同じ四万十帯の付加体でありながら、四国、近畿、中部、それぞれの地域で、地質、岩盤特性、地形にかなり差異があり、そのことが、前兆現象としての初生山体変形や深層崩壊の運動様式にも違いとなって現れているように思われた。
本研究の主目的からすると、今後は、尾根の裂け目が多発している四国山地に調査・研究の重点をおくのが望ましい。詳細な変動地形の解析をベースに、尾根の裂け目と山上平坦地の関係を解明し、付加体山地の深層崩壊の発生場所を予測に結びつけたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、交渉の末、国交省四国地方整備局四国山地砂防事務所所有の航空レーザー測量の数値データーを提供して頂けることとなった。これにより、科研費の予算で航空レーザー測量図(LP図)を図化することができた。LP図を用いれば、2万5千分の1地形図はもちろんのこと空中写真判読でも把握することができない規模の裂け目(線状凹地)を正確に把握することができるようになった。
これに、簡易レーザー測距儀による現地測量を組み合わせることによって、裂け目(線状凹地)の正確な分布だけでなく、裂け目形成に伴う尾根の沈降域の範囲、規模の把握が可能になり、さらには地面の回転の有無や回転の方向も議論できるようになった。
LP図および簡易レーザー測距儀による現地測量の有効性と限界も明確になり、今後、精度の高い変動地形計測の手法の確立に向けて展望が開けた。
調査結果としては、当初予想した尾根の裂け目に伴う尾根の陥没が現実味を帯びてきて、山上平坦面の形成に尾根の裂け目が関係していることが明らかになってきた。

今後の研究の推進方策

今年度は本研究の最終年度である。そこで、尾根の裂け目が至るところで発生している四国山地に調査研究の重点をおく。
LP図と、簡易レーザー測距儀による現地測量を最大限活用し、尾根の裂け目に伴う詳細な変動地形を記載する。それをもとに、裂け目に伴う尾根の変形様式のタイプ区分、尾根の裂け目の有無-陥没の有無-山上平坦面の関係性の解明を行い、その成果を山上平坦面の成因的分類と検出方法の確立という形でまとめる。さらに、深層崩壊の発生場所を予測する方法の確立に向けて、その方策を提案する。
南海地震の発生が危惧されている今日、海岸沿いの平地の津波災害と同様に、山間地域における地震時斜面災害についても関心が高い。そのことを踏まえて、社会・国民への発進として、尾根の裂け目に関する一般書の作成に着手する。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Large-scale landslides in Toyama Prefecture, central Japan, and their probable relationship with earthquakes.2014

    • 著者名/発表者名
      Kojima, S., Nozaki, T., Nagata, H., Tanahashi, R., Kondo, R., Okamura, N., Suzuki, K., Ikeda, A., Nakamura, T. and Ohtani, T.
    • 雑誌名

      Environ. Earth Sci.

      巻: 71 ページ: 2753-2763

    • DOI

      10.1007/s12665-013-2654-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rock toppling assessment at Mugling–Narayanghat road section: ‘A case study from Mauri Khola landslide’, Nepal.2014

    • 著者名/発表者名
      Regmi, A.D., Yoshida, K. Nagata, H. and Pradhan, B.
    • 雑誌名

      Catena

      巻: 114 ページ: 67-77

    • DOI

      10.1016/j.catena.2013.10.013

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 地すべり現象の地質学的な“みかた”2014

    • 著者名/発表者名
      横山俊治
    • 雑誌名

      日本地すべり学会誌

      巻: 51 ページ: 14-23

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Long-traveling landslides in deep snow conditions induced by the 2011 Nagano Prefecture earthquake, Japan.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamasaki, S., Nagata, H. and Kawaguchi, T.
    • 雑誌名

      Landslides.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1007/s10346-013-0419-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] なぜ,西南日本外帯で降雨時あるいは地震時に深層崩壊が多発するか?2013

    • 著者名/発表者名
      横山俊治
    • 雑誌名

      日本地すべり学会誌

      巻: 50 ページ: 1-6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 秩父帯北帯の谷ノ内地すべりの地表面輪郭構造の再検討2013

    • 著者名/発表者名
      佐々木誠・横山俊治
    • 雑誌名

      高知大学学術研究報告

      巻: 62 ページ: 11-23

  • [学会発表] 2011年台風12号で発生した奈良県赤谷深層崩壊の地質構造規制

    • 著者名/発表者名
      横山俊治・井口隆・永田秀尚・加藤弘徳・木村克己
    • 学会等名
      日本地すべり学会
    • 発表場所
      島根県 島根県民会館
  • [学会発表] 地すべりダムを巻き込んだ土石流:2011年宮川流域持山谷のケース

    • 著者名/発表者名
      永田秀尚
    • 学会等名
      地球惑星連合大会
    • 発表場所
      千葉県 幕張メッセ
  • [学会発表] 土石流が通過した地すべりダム

    • 著者名/発表者名
      永田秀尚
    • 学会等名
      日本地すべり学会
    • 発表場所
      島根県 島根県民会館
  • [学会発表] 熊野市ツエノ峰における山上凹地の形成年代とその応用地形学的意義

    • 著者名/発表者名
      永田秀尚・小嶋 智・栢本耕一郎・安井 秀
    • 学会等名
      日本地形学連合
    • 発表場所
      宮城県 東北学院大学
  • [学会発表] テクトニック-ノンテクトニック反転構造:2011年紀伊半島豪雨による高速岩盤すべりを例として

    • 著者名/発表者名
      永田秀尚・木村克己・横山俊治・井口 隆・加藤弘徳
    • 学会等名
      日本地質学会
    • 発表場所
      宮城県 東北大学
  • [学会発表] 線状構造物の計画・維持のための2段階斜面評価法

    • 著者名/発表者名
      永田秀尚・Amar Deep Regmi・吉田孝紀
    • 学会等名
      日本応用地質学会
    • 発表場所
      愛知県 名古屋大学
  • [学会発表] 三重県多気郡大台町薗川上流のせき止め湖堆積物の岩相と年代

    • 著者名/発表者名
      小嶋 智・木戸豊大・勝田長貴・永田秀尚・植木岳雪・沼本晋也・中村俊夫・池田晃子・大谷具之
    • 学会等名
      日本応用地質学会
    • 発表場所
      愛知県 名古屋大学
  • [学会発表] 地すべり現象の地質学的な“みかた”

    • 著者名/発表者名
      横山俊治
    • 学会等名
      日本地すべり学会創立50周年記念シンポジウム「地すべり災害への対応-技術の変遷と課題-」
    • 発表場所
      東京都 東京大学武田先端知ビル
    • 招待講演
  • [学会発表] 黒瀬川帯の新期伊野変成コンプレックスの泥質片岩に形成された谷側への曲げ褶曲

    • 著者名/発表者名
      村上綾一・横山俊治
    • 学会等名
      日本応用地質学会中四国支部
    • 発表場所
      香川県 高松テルサ
  • [学会発表] 四万十帯の付加帯構造と深層崩壊

    • 著者名/発表者名
      横山俊治
    • 学会等名
      地温調査研究会
    • 発表場所
      広島県 第3ウエノヤビル
  • [学会発表] 高知県伊野町葛地区における斜面診断

    • 著者名/発表者名
      石橋愛香・横山俊治
    • 学会等名
      日本地質学会四国支部
    • 発表場所
      愛媛県 愛媛大学
  • [図書] 5万分の1地質図幅「早池峰山」2013

    • 著者名/発表者名
      川村寿郎・内野隆之・川村信人・吉田孝紀・中川 充・永田秀尚
    • 総ページ数
      101
    • 出版者
      産総研地質調査総合センター

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公開日: 2015-05-28  

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