研究課題
台風や豪雨によって多量の水蒸気が日本にもたらされるが,その水蒸気がどの海域から蒸発したのか(水蒸気の起源)を明らかにする方法は確立していない.そこで,水の相変化によって変化する降水の安定同位体比を利用して,同位体循環モデルや水蒸気の起源解析を検証した.インドネシア,パラオ,石垣島など日本各地において降水の安定同位体の観測ネットワークを構築し,日単位での降水同位体比の観測を行った.その結果,インドネシア海大陸と日本全国において,同位体比の季節変化や水蒸気起源の変遷を明らかにした.その他にもベトナム,バングラディシュ,ジャカルタにおいて集中観測を行い,同位体モデルと比較した結果,同位体大循環モデルは降水同位体比の季節変動を再現しており,大気大循環場が適切に表現されていることが検証できた.次に,空間解像度30㎞の同位体局地循環モデルで台風の降水や水蒸気の同位体比を計算した結果,台風中心に向って同位体比が徐々に低下する変化をよく再現した.そこで,1979年から2011年までの間に沖縄,九州,関東に到達した台風を対象にして,降水同位体比と水蒸気起源の関係を考察した.その結果,沖縄と九州では低緯度起源の水蒸気が長距離輸送されて台風の降水同位体比は低いが,関東では日本近海で蒸発した高い水蒸気の寄与により台風の降水同位体比は低くならないことを明らかにした.さらに当初計画を発展させ,2013年には日本全国約60地点において降水の安定同位体比の集中観測を成功させ,WEBデータベースを構築した.初期解析の結果,降水の安定同位体比を緯度と標高から再現する推定式を完成させた.また,冬季の北西季節風による大陸からの水蒸気は太平洋側まで到達しているが,水蒸気量が少なく降水への寄与は小さいことを示している.今後,他の研究者にも呼びかけて降水同位体比の観測値を増やし,データベースを充実させる予定である.
日本初となる降水の安定同位体比データベースを構築し,2013年集中観測における55地点分の月平均データを入力した.データベース管理として,会員登録や検索機能も付けてある.世界的に見ても,これだけ高密度な観測を行った例は無いため,とても貴重なデータベースである.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.imwg.dincs.com/