研究課題/領域番号 |
24510259
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
園田 潤 仙台高等専門学校, 知能エレクトロニクス工学科, 准教授 (30290696)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地中レーダ / GPUクラスタ / 超高速シミュレーション / 地下構造解析 / 自然災害 / 誘電率測定 |
研究概要 |
平成24年度は,(1)GPUクラスタを用いたFDTD法による地中レーダシミュレーションの超高速化と,(2)実際のフィールド実験との比較を実施した。 (1)では,GPU 10台を用いたGPUクラスタのタスク並列により,①複数のモデルを与えることで地下構造を推定するプログラムを開発した。この結果,地下に埋設されたパイプの深度を短時間で推定できることを示した。さらに,②地下断層検出の統計的シミューレションを行うプログラムを開発した。この結果,計算時間が増大し困難であった地中レーダによる断層検出特性について,断層ずれと地中不均質性による関係を定量的に明らかにした。GPU 4台を搭載したワークステーション2台を接続したGPUクラスタのデータ並列により,③計算時間が増大する大規模な地下構造モデルを短時間でシミュレーションできることを明らかにした。さらに,④地中レーダをリアルタイムでシミュレーションできる可視化システムを開発した。 (2)では,①校内砂場で金属・塩ビパイプの検出実験を行い,(1)で開発したプログラムとの比較を行った。この結果,(1)のプログラムにより,埋設深度を短時間で推定できることを明らかにした。②フィールドでの評価実験として,水分率が変化する海岸波打ち際での透水度検出や,③護岸堤防の内部構造探査の評価実験を行った。この結果,水分量により特徴的な受信信号が得られること,堤防内部の鉄筋の埋設深度や本数が短時間で検出できることを明らかにした。 平成25年度以降の予定であった地中レーダを用いた自然災害の被災状況調査として,名取市閖上において震災行方不明者の捜索活動に参加した。地中レーダにより遺留品などを検出できる可能性があることを明らかにした。 当初予定にはなかった地中レーダの深度推定で必要不可欠な誘電率測定について,新しい測定原理により低コスト化できる手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究目的であったGPUクラスタによる超高速地中レーダシミュレーションプログラムの開発と,実際のフィールド実験との比較を予定どおり行っている。これに加えて,平成25年度以降の予定であった東日本大震災の震災行方不明者捜索活動にも研究成果を適用しており,また予定として挙げていなかった地中レーダの深度推定で必要不可欠な誘電率測定について,新しい手法で低コストな誘電率測定器を開発している。さらに,地中レーダによる行方不明捜索の発展として,JAXAの人工衛星や航空機搭載レーダを組み合わせた手法による共同研究を始めている。 研究成果は,学術論文や学会・研究会で報告している。また,東日本大震災の震災行方不明者捜索活動は,テレビや新聞で報道されている。さらに,開発した新しい誘電率測定器は,特許出願中である。
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今後の研究の推進方策 |
地中レーダとGPUクラスタによる超高速シミュレーションを用いて,また,他の電磁波センシングとの組み合わせにより,実際のフィールドで自然災害の防災・減災・救助・復興に適用するための評価実験を行っていく予定である。 (1)河川堤防の透水度・危険度検出の評価実験およびシミュレーションとの比較を行う。 (2)地中レーダと人工衛星・航空機搭載レーダの組み合わせによる広域の地下構造検出について,実際に東日本大震災で被害を受けた地域での評価実験を行う。 (3)地中レーダや人工衛星・航空機搭載レーダの地下構造推定で必要不可欠な誘電率測定器について,新しい測定原理により低コスト化・高精度化できる測定システムを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実際のフィールドで地中レーダを用いた評価実験を行う。 (1)河川堤防の透水度・危険度検出特性では,仙台市内の実験に適した場所を選定し,晴天時や雨天後などにおける評価実験を行う。評価実験の場所については,国交省と調整中である。 (2)広域における地下構造検出について,地中レーダとJAXAの航空機搭載レーダPi-SAR-L2を組み合わせた方法を評価する。東日本大震災で被害を受けた名取市閖上地域において,Pi-SAR-L2での検出箇所を地中レーダで探査する評価実験を行う。 (3)地中レーダ・航空機搭載レーダで地下深度を推定する際に使用される誘電率測定について,平成24年度に開発した手法を一般化・可搬化・高度化する新しいシステムの開発を行い,その評価実験を行う。
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