本研究では,表層崩壊の発生危険評価の精度向上のために必要不可欠な情報である表土層深分布を従来手法に比して容易に把握でき,かつ精度の高い手法を確立させることを目的としている.表土層の形成には,地形が大きく影響しており,本研究では重回帰分析結果に基づく地形量と表土層深の関係式から表土層深分布を推定する手法を提案することとした.花崗岩地域の表土層は,堆積,浸食等により形成される土層である運積土層と基岩である花崗岩が風化することにより形成される土層である残積土層から構成されており,地形量と表土層深の関係を明らかにする際には,表土層を1つの層としてとらえるのではなく,それぞれを別々の層として扱うことにより表土層の形成過程を考慮できるものと考え,個別に地形量と表土層深の関係式を作成し,それらに基づく表土層深分布推定手法を提案した.本手法を試験地に適用し,その精度を検証した結果を以下に示す. 本手法では,実測点が必要となるが,地形区分毎に10測点前後あれば地形特性値(説明変数)と表土層深(目的変数)の相関関係を明確化させることができ,その関係性から推定値と実測値を近似させることができることを示した.また,目的変数についてもグループ化等を考慮することで推定精度は向上することがわかった. 表土層深を形成過程別に考え,それぞれ重回帰分析を行うと全ての地形区分において良好な推定を行うことができることを示した.その際,説明変数の選定は地形区分別,形成過程別に差異を設けると推定精度が向上することを示した. 形成過程を考慮した重回帰分析に基づく表土層深の推定式を作成すれば実用性のある表土層深の推定を行うことが可能であると考えられ,数値標高モデルから各格子点における地形量を算出し,そこから推定式により格子点毎の表土層深を推定することで,広域の表土層深分布を実測に比して容易に得ることが可能となることを示した.
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