本研究では赤道域季節内変動(MJO)と低緯度で発生する熱帯擾乱、中緯度のアジアモンスーンの変動との相互作用に着眼し、MJOがインドシナ半島の豪雨に対する影響を中心に研究を行った。インドシナ半島域で豪雨発生時の大気循環場を調べた結果、MJOに伴う対流活発域の東進に伴い、南シナ海域で強い西風が観測され、南北方向に東西風風速の強いシアが形成された。その結果、西進擾乱と一般場との順圧相互作用により擾乱が発達、持続した。 エネルギー収支解析の結果から、豪雨発生期間中擾乱の運動エネルギーの供給源としては、基本場からの変換が非断熱加熱とほぼ同程度で、西進擾乱の発達・維持に基本場からエネルギーの変換が大きな役割を果たしていることが見出された。
平成27年度は、タイ南部乾季の豪雨について研究を行った。 1.2011年3月に南部タイで広範囲に持続した豪雨発生時の大気循環場を調べた結果、持続した強い冬季モンスーンのコールドサージと、インド洋から発達したMJOの東進に伴う対流活発な位相が西部インドネシア付近で同期したことが2011年3月南部タイの広範囲に持続的豪雨をもたらした要因であることが示唆された。 2.タイ南部の降雨観測データを用いて解析を行い、タイ南部で乾季のMJO活動と冬季モンスーンのコールドサージの発生状況を調べた。3月で、インドネシア西部付近で顕著なMJOの東進はおよそ3年に1度である。 一方、 持続した強い冬季モンスーンの発生はおよそ3.6年に1度である。時期が重なったのは2011年3月下旬だけであった。持続した冬季モンスーンの発生と、MJOの東進が重なったことによりタイ南部での乾季における豪雨発生の頻度はおよそ30~60年に1度程度であると推定される。
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