研究課題
東日本大震災では、港湾内の多くの船舶が津波により陸上に流された。船舶そのものの被害もさることながら、船舶やその積み荷が凶器となり陸上の構造物を破壊した。津波の到達が予測される場合、停泊中の船舶の多くは被害を避けるため沖合に待避する。研究期間全体を通じて、第2管区海上保安本部より東日本大震災時の船舶の状況を示す船舶AIS(Automatic Identification System)データを入手して解析し、また、その他の記録の調査を実施した。当時の仙台港にはタンカー等の危険物を搭載した船舶とその他の船舶が混在していたことや、岸壁で荷役に関連する作業を実施していた者が死傷する事案があったことが分かった。したがって、最終年度は前年度までに開発したマルチエージェントシミュレータによる東日本大震災時の仙台港の船舶の動向を再現するプログラムを、危険物搭載船とその他船舶が入力できるように発展させて、シミュレーション結果と実テータの比較と検討を行った。前述したとおり、船舶が陸上施設を破壊することは避けなければならないが、乗り上げる船舶が危険物を搭載した船舶である場合に、その被害はさらに甚大なものになる。よって危険物を搭載した船舶は必ず退避する必要があると仮定してシミュレーションを実施し、危険物搭載船舶が陸上に乗り上げて周囲の施設を破壊するような被害を免れるためには、概ね津波到達時間30分前までには出港準備が完了している状態であるという結果を導いた。また、港湾周りの住民や旅行者の避難行動に心理的な要因があることも指摘されており、今後の研究への展開を図る目的で、その避難行動を組み込んだシミュレーションプログラムを開発した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
World Academy of Science, Engineering and Technology, International Journal of Computer, Control, Quantum and Information Engineering
巻: 9(2) ページ: 378--381