研究課題
申請者は、配列依存的アレル特異的メチル化の存在を世界に先駆けて報告し、多型配列が引き起こす各種疾患感受性差異の作用機序をゲノムメチル化の有無が導く遺伝子発現差異を通して理解可能なことを示した。一方、近年、ヒドロキシメチル化がゲノム上からの脱メチル化過程で重要な働きを担っていることや遺伝子発現調節にも寄与していることが示唆されている。そこで本研究では独自に手法を構築することで、新たに配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化及び配列依存的アレル特異的遺伝子を同定し、同様に各種多型配列が導く疾患感受性差異の作用機序解明に貢献することを目的とした。昨年度はアレル別のヒドロキシメチル化も検出可能なATMD-PCR 法を新たに構築し、これを用いてヒト脳において4個の配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化候補を見出した。しかしながらヒト脳由来のゲノムは一個体のみしか販売されていなかったため、配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化候補中に存在するSNPがヘテロな個体を得ることができず、これが配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化なのかを調べることができなかった。そこで本年度は、昨年度に申請者が独自に開発したATMD-PCR 法を用いて、ヒトより多型解析に適したマウスにおいて配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化を探索することにした。マウスではすでに配列依存的アレル特異的メチル化領域が同定されており、そのためこれらが配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化候補と考えられる。そこでマウスにおける6個の既知の配列依存的アレル特異的メチル化領域が配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化を受けているか否かをATMD-PCR 法を用いて調べた。結果としてこのうち一つが配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化を受けている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の当初の目的は、前年度までに開発したATMD-PCR法を用いて、ヒトにおいて配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化を同定することであった。しかしながら複数のヒトサンプルの入手が困難であったため、本年度は対象をマウスに変更した。これにより、ATMD-PCR法を用いてマウスの配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化候補を同定できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
本年度新たに同定したマウスの配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化候補が本当に配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化を受けているかを詳細に確認する。新たにB6マウスとJFマウス間のF1マウスを準備し、これから各組織由来のゲノムを調整する。これと5-hmCシークエンシング用試料調製キットを用いて、配列依存的アレル特異的ヒドロキシメチル化候補の一塩基レベルでのヒドロキシメチル化およびそれのアレル特異性と配列依存性を検討する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Human Genetics
巻: Vol.58 ページ: pp.446-454
10.1038/jhg.2013.55