研究課題/領域番号 |
24510270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
内海 文彰 東京理科大学, 薬学部, 准教授 (00256679)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | TATA-less promoter |
研究概要 |
転写開始点付近に重複GGAA配列を持つ遺伝子の5’-上流領域の単離と塩基配列の解析 これまでに本研究室では、50種類以上のヒト遺伝子プロモーター領域を含むLucレポータープラスミドを種々の細胞にトランスフェクションし、プロモーター活性を測定する多検体アッセイ法を確立することに成功している。平成24年度においては、特にHL-60細胞分化誘導に伴って活性化するヒト遺伝子やインターフェロン(IFN)応答性遺伝子(ISG)プロモーター領域を単離し、レポータープラスミドを構築して、それらに含まれる重複GGAA配列の重要性を明らかにすることに成功した。このアッセイを応用してIFN刺激だけでなくDNA損傷刺激、細胞増殖(停止)刺激、レスベラトロール等の抗老化薬物処理等に対する重複GGAA配列の応答を調べることができる。本年度は特にヒトTP53遺伝子プロモーター領域に存在する重複GGAAモチーフの重要性を示すとともに、E2F結合エレメントが天然の物質であるレスベラトロールに対する応答に重要な役割を果たしていることを見出しており、現在国際学術雑誌への投稿の準備に取り掛かっている。さらに、In silicoゲノムDNAデータベース解析を行ったところ、ミトコンドリア機能関連遺伝子のプロモーター領域にも非常に高頻度で重複GGAA配列の見出される事実が判明したので、現在すでにそれらのプロモーター領域の解析を進める計画を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、最終的な目標として以下の2つ仮説の証明に取り組むものである。即ち、一般的に真核細胞の転写開始における機能が非常によく研究されているTATAボックスではなく、重複GGAA配列によって転写が支配されるヒト遺伝子が多く存在していること、そしてこの重複GGAA配列による転写開始メカニズムがヒト遺伝子の細胞分化誘導刺激、DNA損傷応答、IFN応答、そしてエネルギー代謝応答等に重要な役割を果たしているということである。従って本研究では、まず種々のヒト遺伝子プロモーターを単離し、レポータープラスミドを構築することが必須であり、すでに研究計画においてこの点を強調している。現在得られているものとしては、OAS1を含む数種類のISGそしてTP53以外にSUMO1、E2F4、KLF4遺伝子のプロモーターがあげられるが、これらのうち幾つかについては欠失または点突然変異を導入することによってGGAA配列の重要性を見出している。以上の通り、現在までの経過は「おおむね順調に進展している」と結論された。
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今後の研究の推進方策 |
現在得られているOAS1を含む数種類のISG、TP53、SUMO1、E2F4、KLF4、そしてTERT等の遺伝子プロモーターについて、細胞分化誘導刺激、レスベラトロール等の抗老化制御化合物、DNA損傷刺激、エネルギー代謝制御刺激等に対する応答を解析することができるようになった。これまでに既に明らかとなっていることとして、ETSファミリータンパク質だけでなく、NF-kappaB、IRF、あるいはSTATタンパク質等も周囲のDNA塩基配列によっては重複GGAA配列を認識する場合がある。従って、重複GGAA配列による転写反応においては複数の転写因子の関与によって正にも負にも調節可能であることが予測されている。今後の研究においては、これまでに得られている遺伝子プロモーター領域の欠失または点突然変異導入を詳しく行うことによってプロモーター活性と種々の刺激に対する応答に関わるDNA塩基配列を明らかにすると共に、EMSAやChIP解析等を行ってその配列に対する結合因子を調べ、重複GGAA配列による転写開始メカニズムを明らかにすることである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においても平成24年度の研究を引き続き行う。即ち、種々のヒト遺伝子プロモーター領域の単離を中心に進めることになるが、細胞分化誘導遺伝子やISGのプロモーター領域ばかりでなく、ミトコンドリア機能関連遺伝子のプロモーターや人工的なDNA配列によるプロモーター活性の検討も開始するため、遺伝子工学に用いる制限酵素、修飾酵素、特に耐熱性DNAポリメラーゼ等が必要である。また、細胞培養とレポーターアッセイも継続するため、細胞培地、ウシ胎児血清、そしてLucレポーターアッセイ用試薬は必須でなる。また、DNA-タンパク質複合体検出を行うためのDIG-標識EMSA用試薬やChIPアッセイ用試薬を用いる予定であり、平成25年度において以上の研究遂行に伴った消耗品購入をした場合には、平成24年度とほぼ同額の研究費の使用が予想される。
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