本研究では、DEAE-デキストランを用いた多検体プロモーター活性測定法により、ヒト培養細胞に対するインターフェロン刺激あるいは天然及び化学物質処理後に複数のヒト遺伝子プロモーターの応答を検討した。特に抗ウイルス因子をコードするヒトOAS1遺伝子が、ETSファミリー転写因子ELF1のGGAA重複配列への結合によって制御されることを見出した。このOAS1遺伝子の制御に転写因子Sp1や癌抑制因子Rb1が関わることも見出した。OAS1の他、多くのインターフェロン(IFN)応答性遺伝子(ISG)転写開始点付近には、重複GGAA配列が存在する。従って重複GGAA配列制御によるIFN応答性転写メカニズムを明らかにすれば、IFNを用いず細胞内へELF1等の遺伝子を導入する、がんや白血病の新しい治療法の確立も可能となるだろう。本年度はまた、癌抑制因子p53と細胞周期G1→S期の進行を制御するDNAヘリカーゼをコードするそれぞれTP53とHELB遺伝子の5’-上流領域のプロモーター機能と天然の化合物レスベラトロールに対する応答性を学術雑誌に報告した。この応答性には、重複GGAA配列だけでなく、E2F結合エレメントやGC-ボックス等も重要な役割を果たしている。 クエン酸回路、電子伝達系の酵素等ミトコンドリア機能に関わるタンパク質やDNA修復因子をコードする多くの遺伝子がhead-head結合パートナー遺伝子を持ち、その両方向性プロモーター領域には重複GGAA配列が高頻度で存在する。該当する遺伝子のコードするタンパク質の多くは細胞のがん化や老化に関わっている。ISGや細胞周期制御因子をコードする遺伝子ばかりでなく、ヒトミトコンドリア機能やDNA修復に関連する遺伝子のプロモーター領域のクローニングを行い、各遺伝子プロモーターの抗老化薬物等に対する応答性についての検討も既に開始している。
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