研究課題/領域番号 |
24510271
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
嶋田 誠 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 講師 (00528044)
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キーワード | イントロン / スプライシング / 進化 / 突然変異 / 潜在的スプライシング部位 / ヒト遺伝子 |
研究概要 |
我々がヒトゲノム中に特定した、微小イントロンがどのような進化的経緯により短くなったのかを明らかにすることを目的として、ヒト微小イントロンの相同領域ゲノム配列とスプライシング部位を近縁種間で比較した。この比較解析により、ヒトへ至る進化の過程で微小イントロンとして認識されるようになった時期を、それぞれの微小イントロンにおいて特定した。また元々どのような部位が変化してイントロンとなったのかを祖先種での推定スプライシング部位より推定した。その結果、我々が特定した微小イントロンは以下の4つのパターンに分類できることが分かった。すなわち、1)長いイントロンが欠失変異により短くなった、2)突然変異を伴わずに潜在的スプライシング部位が認識されるようになった、3)突然変異によりスプライシング部位が創生された、4)新規にエクソン・イントロン構造が突然変異の蓄積により創生された。 上記(1)(2)によって、より長いイントロンから微小イントロンがつくられたのは22微小イントロン中10イントロンであった。また、潜在的スプライシング部位の利用に起源する4微小イントロンのうち、3つがチンパンジーとの分岐後に出現し、さらにそのうち2つは微小イントロン出現によりフレームシフトを引き起こしていた。そのため、進化的に最近出現したものであることが分かった。逆に、欠失によって微小イントロンとなった、5微小イントロンはいずれもローラシア獣上目(ハリネズミ目、鯨偶蹄目、ネコ目、ウマ目等)と真主齧上目(齧歯目、霊長目等)の分岐以前に出現しており、微小イントロン中では比較的古くから保存されていることが分かった。総じて我々が定義した、微小イントロンは真獣類分岐以降に出現した派生型形質であり、真核生物の系統樹中に散在して観察される短いイントロンとは独立した形質であるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書作成当時、真核生物全体の分類群をイントロン長によって概観することが研究の初期段階に行うこととしていた。ところが微小イントロンの結果を解析するにつれ、利用できるデータが多面的であるヒトイントロンの解析を重点的に行うに至った。そのため、交付申請書で2012(平成24)年度に行うとしていた、出芽酵母のイントロン解析については、遺伝子アノテーション情報を取得し、一通り概観したところまでで一旦終了させ、2013(平成25)年度に行う予定だった遺伝子特徴解析や進化的解析をヒトのイントロンを中心とした作業に移行した。 遺伝子特徴解析については得られた結果の解釈や意義をさらに深める必要があるが、進化的解析については比較的明確な解答が得られ、独立して論文化することも視野に入れ、検討するまでに至った。 微小イントロンの存在報告とその確からしさについて、まとめた論文原稿が未だ出版に至っていないのは反省事項である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果を論文として完結させることが急務である。解析結果をより広く深く議論する場を設け、論文執筆に反映していきたい。これまで行ってきた遺伝子特徴解析の結果や結果を導くまでの経験を活かしつつ、目的を絞り込んだうえさらに新たな解析を行う予定である。例えば、これまで短いイントロンに注目してきたが、逆に長いイントロンについてのデータを充実させたい。 スプライシング因子や転写因子などの核酸に結合する高分子が結合するドメインとして利用される傾向の高い単純配列とその保存性にもとづいて分類することにより重要な潜在的意味を見出しつつあるので、今後推進していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほぼ計画通り、基金としての性格を鑑みて、次年度以降の使用分として残すことができた。 今年度も本科研費が主なる研究資金であるので、昨年度とほぼ同じように使用することになる。
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