【背景】イントロン長はヒトに至る系統群において、体制の複雑さに伴い長いイントロンが含まれるよう進化していると言われている。その理由は、選択的スプライシングによって限られた遺伝子から多様な転写物を産出し、複雑な制御を可能にする適応的意義にあると考えられているが、データ検証を伴う研究はほとんどなされていない。また、ヒト脳では他の臓器に比べ、長い遺伝子が特異的に発現する傾向があること、およびスプライス変異体が多様であることが知られている。このことは人類進化に伴う脳機能の複雑な制御の必要性に対して、遺伝子が長いことでエクソン-イントロン数が増え、多様な選択的スプライシングのパターンが増えたためであるのか、あるいは機能的制約が比較的低いイントロン内にスプライシング制御の配列を無制限に組み込んだためにイントロンが長くなったためであるのか、不明である。 【方法】そこで、公開発現データであるbodymap2のヒト16臓器の発現データから、脳で最も高く発現している遺伝子や転写物を選び出し、それらのイントロン数、イントロン長(各転写物内での平均長、分散、最大長、最低長)、領域長といった特性を結び付けて、それぞれの間の関係を解析した。 【結果】領域長の長い遺伝子には、エクソン-イントロン数が多いことによる遺伝子と、個々のイントロンが長いことによる遺伝子との二通りの様式の存在を示唆している。
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